彼の名は、はげお。初めての記憶は、父親のパパスとともに船に乗っているシーンだ。目的はわからないが、はげおはパパスとともに旅をしていた。
はげおはターバンを巻いている。パパの名はパパスであり、ターバンを決して外さないはげおの名前の由来も同じだ。
寡黙な父の後ろを、金魚のフンのようについていくはげお。モンスターが襲い掛かってくるので、パパスは問答無用で切り刻む。仲間になりたがっているモンスターには目もくれない。それでもはげおには、過剰なくらい「ホイミ」をかけてくれる。ちょっと過保護かも知れない。
サンタローズという名の村に到着した。デブのサンチョという男が、まるで恋人のように父を待っていた。父は、もしかしたらホモなのではないかとはげおは思った。母に逃げられたのはそのせいかと思い、ちょっと悲しくなった。
父に連れられ、アルカパという街に行くと、パパスの親友の娘のビアンカに逢う。昔にも逢ったことがあるらしいが、はげおは覚えていない。記憶から消したいくらいのつらい目にあったのかも知れない。何故か、彼女に逆らうことができない。
ビアンカに引きずられるように街を走り回っていると、飼い猫をいじめている少年たちに出会った。せっせせっせと、一生懸命いじめている。ビアンカは立腹して止めに入ったが、少年たちはレヌール城にいるおばけを退治したら猫を開放してやる、という。意味がわからない。まるで関連性がない。それなのに、ビアンカは乗り気だ。はげおは、断る術を知らない。
すぐにでもこの街から脱出したかったのだが、パパスはビアンカの父に風邪を移されて寝込んでいた。意外に身体が弱い。だったら上着くらい着ればいいのに、とはげおは悔しがった。
夜になるとビアンカに叩き起こされ、街を抜け出してレヌール城へ向かう。外はモンスターに溢れているが、何故か子供のはげおやビアンカの敵ではなかった。殺戮を繰り広げつつ、レヌール城へたどり着く。
城の中は怨霊がたくさんいるのだが、襲い掛かってこないので怖くもなんともない。襲い掛かってくるモンスターは切り殺せるので、怖くもなんともない。ビアンカがおばけにさらわれたので、これ幸いと逃げ出そうと思ったはげおだったが、道を間違えた挙句にビアンカを救出してしまった。
これがはげおの人生を狂わせた原因であることを、まだはげおは知らない。
怨霊となったこの城の王の指示に従い、悪霊たちのボスを倒す。子供に退治されるくらいなのだから、何故大人たちが放置していたのかわからない。
街に戻ると、一夜にしてレヌール城の悪霊が退治されたということが噂となって広まっていた。はげおが眠っている間に、ビアンカがかなり頑張ったのだろう。
飼い猫をいじめている少年たちも観念し、飼い猫を譲ってくれた。譲られても困る。ビアンカがいいだしたことなので、ビアンカが面倒をみるべきなのに、はげおに押し付けられた。しかも、名前はゲレゲレなどという下品極まりない名前にしてくれた。だが、はげおは逆らえない。父は寡黙に許諾してくれたが、あんまり嬉しくない。
ビアンカに開放され、パパスとゲレゲレとともに旅立つ。ゲレゲレはメキメキと強くなり、あのまま放っておいたら、きっといじめていた少年たちどころか街まるごと滅ぼしていたかも知れない。
サンタローズの村へ戻ると、妖精に拉致されてこきつかわれる夢を見た。寝ても覚めても平安が訪れないはげお。父に相談したくても、自分のことで精一杯らしくてはげおの話など聞いてくれない。
やっと夢の中で雪の女王のニセモノを倒して開放される。これでようやくゆっくり眠れると思ったら、父に連れられて旅へ出ることになった。過保護なくせに、息子の都合などまったく考えない父である。
ラインハット城へ入ると、パパスは王子の警護を仰せつかった。やっと定職にありつけた。これで安定した生活ができると思い、はげおも嬉しく思う。
父の仕事を手伝うというわけではないが、王子と仲良くやっておくのがいいだろうと思い、同い年の王子ヘンリーの部屋へ行く。だがヘンリーはやはり王子であり高飛車であり嫌味なやつで、はげおは奴隷扱いにされる。父の仕事を邪魔するわけにはいかないので、はげおは素直にいうことをきく。
すると、ヘンリーが部屋から消えた。一生懸命部屋を探すと、落とし穴が見つかった。落ちてみると、半裸のマッチョな男たちにヘンリーは抱かれていた。父親だけでなく、この王子もホモだったのかと衝撃を受けるはげおだったが、違っていた。ヘンリーは、このヘンタイ男たちによって拉致されたのだ。
あわててパパスに報告するはげお。このままでは、パパスはクビだ。また放浪の旅だ。いや、就任1日目でこんな事件を起こしてしまったのだから、クビはクビでも斬首の可能性が高い。はげおは泣きそうになった。
はげおを放置して、血相を変えて追跡を始めるパパス。城にいても居心地が悪いばかりか、あらぬ疑いをかけられそうなので、はげおも父の後を追う。
ゲレゲレとともに古代の遺跡と呼ばれる洞窟へ入ると、パパスの姿が見えた。回り道をしてやっとそこへたどり着くと、はげおは敵のモンスターに捕らわれてしまう。余計なことをした、おとなしく城で待っていればよかった、と思うが後の祭りである。
怖いので、目をつぶって気絶したふりをするはげお。パパスは、モンスターにリンチを加えられている。
さすがは父親である。はげおが気絶しているふりをしているだけなのを知っていて、いままで一度も明かさなかった旅の理由とか叫ぶ。だがはげおは気絶したふり。聞かないふり。ていうか聞いてない。聞くもんか。だいたい、王子の警護をスッポかしていたあんたが悪いんだ。自業自得だ。自己責任だ。
パパスは、凄まじいリンチの末、息絶えた。
はげおも、本当に気を失った。
街からフィールド画面に出たところでいきなりフリーズする。ナニコノPCエンジンのゲームみたいなデカイ人形キャラは。
意外とサクサクレベルが上がって楽しい。わりとお金も溜まりやすいような気がする。何度か全滅したけど。
他人の家に入って勝手にたんすとか開けてアイテム強奪したり、花瓶とか樽を破壊しまくるシステムは、そのうち教育委員会とかからクレームきちゃうんじゃないだろうか。自分でやっててなんか罪悪感が沸く。盗むけど。割るけど。
それにしても、ぜんぜん親子のスキンシップがないね。昭和の親子って感じだ。
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気づくともう10年も奴隷生活を送っている。
慣れればこの生活もそんなに悪くない。頭の悪そうな監視員たちも、はげおには一目置いているらしく、口では厳しいが決して攻撃を加えようとはしない。返り討ちに遭うのがわかっているのであろう。仕事も適当に、自由に動き回ることができる。一緒にこの場所に連れてこられた元王子のヘンリーなど、仕事をしているところを見たことがない。あいつはあいつで裏で上手くやっているらしい。
それにしても、もう10年以上も神殿の工事をしている。某新興宗教の新しい神殿を建設するのが仕事なのだが、岩を掘ったり転がしたりしているだけでは、建築が進むわけもないというものだ。
しかし、将来に多少不安がある。神殿が完成してしまえば、この窮屈なりに自由気ままな生活ともおさらばだ。
そんな折、ある奴隷の女がヘマをしたらしく、監視員たちに強姦されていた。よくあることだ。無視しようとしていると、ヘンリーが監視員に襲い掛かった。しかもヘンリーは、自分で仕掛けておいてはげおに助けを求める。意味がわからない。はげおはシカトしたのだが、いつまでたってもヘンリーは監視員と戦っている。埒が明かないので、仕方がなくはげおは助っ人に入り、監視員をぶちのめす。
お蔭で、牢に入れられてしまった。腕力にものをいわせてヘンリーに詰問すると、前々から狙っていた女だったらしい。
呆れていると、甲冑姿の男がやってきて礼をいわれる。さっきの女の名はマリアといい、この男の妹だという。このままでは、マリアともども処刑されてしまうだろうという。はげおはヘンリーに殺意を抱いた。
マリアの兄の手筈で、この建築現場から脱走することになった。マリアの兄が用意したのは、なんと樽だった。男2人に女1人が1つの樽の中に強引に押し込められ、海に放り出される。話が違う。これでは脱走ではなく拷問だと思う。
鎧や武器などのアイテムもみっしり詰まった樽。どう考えても浮くはずがなく、ドラム缶にコンクリートを流し込まれて海に沈められるのと同じようなシチュエーションだ。
はげおは必至の努力で空気を取り込んで海に浮かぶ。魔法の力かも知れない。だが海図も舵もなく、針路を決めることもできず、ただ海に浮かぶだけ。
狭い樽の中で、身体をすり合わせる男と女。マリアは、男たちの汗臭い体臭とストレスからくる口臭と汗のぬるぬる感と船酔いと絶望感で半狂乱になり、意味のわからないことを叫んで意識を失った。鼻息の荒いヘンリーがなにかごそごそやっているような気がするが、はげおはそれどころではない。油断すると沈む。
奇跡が起こり、ある海岸に打ち上げられ、教会のものに助けられた。疲れ果て、気を失うはげお。
意識を取り戻すと、心身ともに傷ついたマリアは出家していた。マリアの心に消えない傷をつけたヘンリーは、ニヤケた顔で彼女を見ている。そんなヘンリーに、シスターたちが汚物を見るような視線を送っている。
この教会にいても、女の心の傷を刺激するだけなので、旅立とうとするはげお。ヘンリーも、教会から追い出されたらしく、ついてくるという。少しは役に立つかも知れないので、連れて行くことにする。
久しぶりの娑婆だ。
奴隷生活も悪くはなかったが、やはり本当に自由なのは良い。はげおはさっそく、その辺のモンスターを捕まえて暴れ回った。返り血を浴びると、懐かしさと嬉しさがこみ上げる。
ふらりと立ち寄ったオラクルベリーという名の街で、馬車を破格の9割引の値段で購入。
あまりにも安いので怪しいと思ったら、気色の悪い白馬と、モンスターが住みたがる幌馬車のセットだった。こりゃ一般人にはキツイ。しかも、御者席がないので引いて歩かなければならない。まるで馬車の意味がない。更にこの馬、馬の癖に男色家であるらしく、はげおの尻のニオイをやたら嗅ぎたがる。油断すると、犯されそうだ。
スライムとかおばけきのことか仲間にしつつ、故郷のサンタローズに行ってみたら、廃墟になっていた。話によると、王子が拉致されたのは監視を怠ったはげおの父のパパスの責任だとされ、ラインハットから軍隊が派遣されて報復されたようだ。
ヘンリーは責任を感じているようだ。だが、どう考えても悪いのはパパスだ。護るべき王子を油断しまくって拉致された上に、息子まで拉致され、奴隷にされてしまったのだ。自分はカッコよく死んで責任逃れ。
むしろ責められるのは、あんなダメオヤジの息子である、はげおの方なのだが、なにもいわずすべての責任をヘンリーに押し付けておく。その方が気が楽だ。
サンタローズにある洞窟の奥へ行ったら、天空の剣とともにパパスの手紙があった。勇者を探していたので代わりに探してくれ、などと、これまた無責任なことが書かれていた。こんなことだから、妻に逃げられてしまうのだ。
ヘンリーがラインハット城へ帰りたそうにしているので、付き合うことにする。だがトラブルに巻き込まれるのはめんどくさいので、森や山を彷徨って時間を稼ぐ。
こうしてモンスターを倒していると、なんだか強くなった気がする。馬車のなかのりんごも、邪悪な笑みを浮かべている。それにしても、話しかけると「はあぁ〜」と囁くおばけきのこが強い。はげおを上回る強さだ。
しかし、そろそろヘンリーを連れまわすのも限界だ。あまりにも悩んでいるので、後頭部の十円禿げが、五百円禿げになってきた。このまま迂回を続けていると、つるっ禿げになってしまって誰だかわからなくなってしまう。顔色も悪い。
うつろな目でブツブツと呟くヘンリーの暗い雰囲気にも辟易してきたし、戦力的にはもう役にも立たないので、ラインハット城に行って開放するつもりだ。お家事情に巻き込まれるかも知れないが、おばけきのこに暴れてもらうとしよう。
とりあえず、宿で一泊。久しぶりに、教会に寄る。
まあなんつーか、ゲームシステムはとても面白い。ゲームバランスも、素晴らしく難易度が下がって楽ちんである。フィールドをぶらぶらしつつ、イベントをクリアしてるだけでレベルが上がるので、ぜんぜん苦しくない。
ストーリーを先に進めようって気にはなれないけども。
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元王子のヘンリー頼みでラインハット城に行ったら、ニセモノの皇后が悪政をしいていた。マリアの力添えででラーの鏡を手に入れ、ニセモノの皇后の正体を暴いたら、タラコ唇のブサイクなモンスターだった。腰が抜けそうになる。
ヘンリーは、王である頼りない弟を補佐するので残るという。厄介払いにちょうどいい。
それにしても、某新興宗教の建築現場から一緒に逃亡し、樽の中でヘンリーに悪戯され、関係を絶つために出家したマリアという女、ヘンリーが本当に元王子だと知ると、あれだけ嫌悪感をあらわにしていたのにも関わらず、手のひらを返したかのように、取り入ろうと必死になっていた。どちらかというと、はげおの方に好意をいだいていたはずなのに。たいした女である。
友達は、モンスターだけである。
はげおはモンスターを連れて旅に出る。「はあぁ〜」とかしか喋らない相棒たちとともに、世界を放浪する。ちょっとさびしい。人間の言葉で会話したい。
船に乗って異国の地に降り立つ。港町の名はポートセルミというらしい。なかなか栄えた街だ。
酒場でモンスターが畑を荒らすので退治してくれと頼まれる。ヒマなので承諾して洞窟の奥へ行くと、どこかで見たようなキラーパンサーがいた。全力でいくら殴っても切り刻んでもびくともしないタフネスさで、何度となく逃げ出す。
ふくろの奥深くに突っ込んでいた汚れたリボンを差し出すと、そいつは急になついてきた。そいつは、子供の頃すこし一緒に旅をした、ゲレゲレだった。何故かパパスの剣を守っていた。
ぶっちゃけ、そんなに親しいやつではない。パパスの剣だけ守っていたというのも、わけがわからない。父になんか、ぜんぜんなついてなかったはずだ。はげおとも、数日間一緒に旅しただけだ。しかもパパスの剣、もう時代遅れだ。強くもなんともない。
依頼主がいるカボチ村に戻ってみると、グルだったんだな、とかいわれていい迷惑だ。疑いを晴らすこともできず、戦力的にまったく役立たずのゲレゲレを連れて、村を離れる。
ぶらりと立ち寄ったルラフェンという街で、古代魔法を復活させる手伝いをする。「ルーラ」という魔法で、一度訪れた街に瞬間移動できるという実に便利な魔法だ。実験は成功し、はげおは「ルーラ」を習得した。
結婚式が盛大に行われたという噂が気になったので、「ルーラ」でラインハット城に行ってみる。
予想していたこととはいえ驚いた。マリアがヘンリーと結婚してやがった。玉の輿ってやつか。まったく、地位や金が関わると、女は変わるものである。マリアは豪華な衣装を身にまとい、満面の笑みである。ヘンリーは、どこか自棄になっているような気がする。だが、自業自得である。
信用できるのは、モンスターだけである。
はげおはモンスターたちを連れ、旅を続ける。
ラーの鏡て。このネタいつまで使いまわすんだろうか。「ドラゴンクエスト7」でもあったっけ。
それにしても、相変わらず人間憎悪に満ち溢れたグロいシナリオだ。レベル上げしているときが、いちばん楽しい。なので、フィールドを歩きまくり。なかなか新しいモンスターが仲間にならないけど。
ゲームバランスとか洞窟のマップとか秀逸だ。素晴らしく楽しい。
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今日もはげおの無目的な旅は続く。
洞窟をくぐって、サラボナという塔がそびえる街に到着した。
フローラとかいう金持ち風の娘の飼う下品な顔の犬にハァハァされて気分が悪くなる。散々最悪な人生を送ってきているので、ああいう幸せそうな人間を見ると虫唾が走るはげおであった。
なにか浮ついた雰囲気の街だ。話を聞くと、大富豪が娘のフローラの婿を公募していて、逆玉を狙った貧乏人の男どもが終結しているという。人権侵害もはなはだしい。世の中にはとんでもない親がいたもんである。
フローラの夫になれば、父のパパスが探していた天空の盾がもらえるという噂を聞く。父の意思などどうでもいいのだが、あれでも一応世話になった親なのだし、知ってしまったからには無視するのもなんだか気持ちが悪い。
試しに大富豪の館へ行ってみると、もう金の亡者としかいいようのない胡散臭い奴らや、なにか勘違いした知能指数の低そうな奴らがハァハァしていた。こんな奴らと同類だと思われたくないので、さっさと館を後にする。
しかし、行き止まりである。広大に思えた世界だが、これ以上どこへも進めない。
うなだれて街に戻り、仕方なく大富豪の館へ行くと、まださっきの胡散臭い奴らがハァハァしていた。自棄になって、はげおもハァハァしてみる。すると、面接が始まった。大富豪は、炎のリングと水のリングの2つの指輪を持ってきたら娘をくれてやる、という。娘の意見はまったく聞かない。世の中にはとんでもない親がいたもんである。
火山へ向かい、炎のリングをゲットして大富豪に持っていくと、船を貸してくれた。もうひとつの指輪をゲットするには船が必要らしい。この時点で、遺産目当てのライバルはいなくなっていた。どいつもこいつも、下半身と成金の欲望だけの奴らだった。
水門を開けに、ちいさな村へ行ったら、子供の頃すこしだけ一緒に旅をしたビアンカという女がいた。幼馴染といってもいいだろう。いい女に成長していたが、寝たきりの父を抱えて難儀していた。
事情を話すと、ビアンカの顔色が変わった。一緒にきたいというので、洞窟へ連れて行くことにする。戦力的にはまったく役にたたず、1度殺してしまった。それでもまだついてくるという。そんなに足を引っ張りたいのか。迷惑はなはだしい。
水のリングをゲットしたので、大富豪のところへ向おうとしたのだが、色気づいたビアンカに村に誘われ、つい一泊してしまった。迂闊だった。どうやらビアンカは、ひとりで父親の世話をするのがキツイので、はげおに押し付けたいらしい。いや、幼馴染が裕福になって自分だけ不幸になるのが許せないのかも知れない。
フローラと結婚生活を送る気などさらさらなく、貰うものを貰ったらとっとと消えるつもりなのだが、信じてくれない。今まで苦労したのだろう、ビアンカはすっかりひとを信じない人間になっていた。
気が重い。
ついにきました結婚イベント。それにしても、ビアンカもフローラもキャラが薄い。稚拙な短いエピソードばかりで、思い入れがまったくない。愛のない結婚になりそうだ。シナリオライターの悪意がひしひしと伝わってくる。
LV25になってなかなかレベルが上がらなくなってきたが、ゲームバランスは未だ秀逸。ただ、気に入ったモンスターのレベルの上限があるのは残念だった。さようなら、おばけきのこ。
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はげおはキメラを仲間にしようと思い、ビアンカにキメラを仲間にするまでは街に帰らないと宣言した。
ビアンカの視線が痛い。街に戻れば、例の大富豪に会いに行かねばならない。、すでに水の指輪は手に入れているので、それはフローラとの結婚を意味する。
気が重い。ビアンカさえいなければ、フローラと結婚し、親父が探していた天空の盾とかいう骨董品を貰い、そのまま蒸発するつもりだった。だが、ビアンカがいる。はげおとフローラの結婚を、よく思っていないのはあきらかだ。結婚式で、はげおを祝福すると見せかけて、あることないこと暴露するに違いない。そういう女だ。
キメラが仲間になった。時間稼ぎも、ここまでだ。
サラボナへ入り、大富豪の屋敷へ行く。水のリングを渡すと大富豪は喜び、明日正式に話を進めようという。真綿で首を絞められるとはこのことだ。背後のビアンカが、無言ではげおを睨む。
宿で一泊していると、ビアンカが最後のアプローチをかけてきた。寝たふりをしようとしたが、悲しい雄の性が心とは裏腹の行動を取る。はげおは、自己嫌悪した。
翌朝、あまり眠れなかったので寝坊した。胃が痛い。重い足を引きずって、大富豪の館へ行く。先にきていたビアンカは、余裕の笑みを浮かべている。はげおがフローラと婚約したら、はげおとの関係を暴露するつもりなのだろう。
するとこの大富豪、はげおにフローラとビアンカのどちらかを選べという。なにを考えているのだ。たいせつに育てた箱入り娘と、このあばずれ女を比較検討しろというのか。
フローラが顔を歪める。大富豪も、はげおを蔑んだ目で見ている。
やられた。はげおは気づいた。ビアンカの魔手は、ここまで伸びていたということか。
ビアンカの描いた絵の通り、はげおはビアンカを選んだ。大富豪は、おおげさに喜び、結婚式まで手配してくれるという。ハメられた。はげおは無力だった。ただ、ビアンカの思い通りになるしかなかった。
教会で、質素な結婚式をあげることになる。どこで話を聞いたのか、わざわざラインハット城からヘンリーとマリアがやってきていた。ヘンリーは、同類を哀れむような視線をはげおに向ける。
ビアンカは、綺麗なウェディングドレスを用意していた。いったいどこからそんな予算を捻出したというのだろうか。はげおは、普段着だ。いつもの汚れた旅装束だ。ヘンリーが、涙を流してくれる。気づくと、はげおも涙を流していた。
神父の前で、誓いの言葉をいえと強要される。無言の抵抗をしても無駄だった。式は滞りなく進み、はげおはビアンカの夫になった。人生が終わったような気がして、目の前が真っ暗になり、気を失った。
気がつくと、大富豪の屋敷の別館にあるベッドに寝かされていた。ビアンカはわざとらしく淑女を演じる。はげおは吐き気を覚えた。
大富豪のところへいくと、祝いに船をくれるという。つまり、船をやるからとっとと出て行けということだろう。フローラは、はげおのことを見ようともしない。
ビアンカとともに、街を出る。ビアンカの父がいる村へ足を伸ばすと、寝たきりだったはずの義父は普通に生活していた。やはり罠だったのか。嬉しそうにしている義父とビアンカ。その隙に逃げ出そうとしたが、無駄だった。
港町のポートセルミへ「ルーラ」で飛ぶと、大富豪に貰った船に乗り、航海に出る。航海というより、後悔の旅だ。
ポートセルミの酒場で南に砂漠があるという話を聞いたが、興味はない。とりあえず、東から南下する。
船の中で、何度か泣いた。
南東の大陸に降りると、ちいさな宿があったので一泊する。ビアンカが執拗に求めてきたが、頑なに拒否した。
山を越えると城があるというので、向かうことにする。どうせ目的などないのだ。それに山には事故はつきものだ。チャンスがあれば、思い切ったことをしようとはげおは決意した。
しかし、問題なく山頂に到着した。山登りとはいえ、大半は洞窟であったから、はげおの目論見はあえなく破綻した。
山頂のチゾットという名の村につくと、いきなりビアンカが倒れた。なんのパフォーマンスかと冷たい目で眺めていると、村人が慌てて助けにきてくれた。どうやら演技ではないらしく、本当に体調が悪いらしい。
このままビアンカを置いて逃げ出そうと思ったのだが、そうもいかない。諦めて、看病する。
一夜明けると、ビアンカの体調は戻ったようだ。だが、なにか嫌な予感がする。背中に悪寒が走る。
念のためもう1日ゆっくりすることにして、ビアンカを宿に残すと、はげおは昼間から酒場で酒をあおる。すると、親父の話がでてきた。身の上話をしたのではない。これから向かうグランバニア城の話をしていて、パパスという名が出てきたのである。
驚くべきことに、パパスは国王であるらしい。妻を誘拐されたので、息子のはげおとともに国と国民を捨てて旅に出たという。なんという無責任な男だ。
はげおは、実は王子であったのだ。そして疑惑が生まれる。ビアンカは、この話を知っていたのではないか。親父から聞いていたのではないか。だからこそ、はげおと結婚したのではないか。
気晴らしをするつもりが、余計に落ち込んでしまった。はげおは、酔いつぶれた。
翌朝、二日酔いの重い頭を引きずって、村から出る。つり橋を進み、洞窟に入る。何度も落とし穴から身を投げようとするが、何故かうまく着地してしまい、無傷だった。死ぬことすら許されないらしい。
何度か自殺未遂を繰り返していると、道に迷って山のふもとへ出てしまう。グランバニア城は、目前だ。ビアンカの目が輝いている。やはりハメられたに違いない。
グランバニア城には親父の従者だったデブのサンチョがいて、涙ながらに抱きしめてくれた。やはりはげおは王子らしい。ビアンカの計算高い目が笑っている。恐ろしさの余り、はげおは失禁しそうになった。
だが、真の恐怖はこれからであった。
ビアンカが倒れた。山頂の村に続いて2度目だ。サンチョはビアンカを抱えあげると、慌てて城に連れて行き、豪華なベッドに寝かす。優秀な医者を揃えると、完璧な診断が始まった。
そして、はげおは失禁した。
ビアンカは妊娠していたのだ。サンチョや医者は、はげおを祝福する。ビアンカは、はげおの妻だからだ。
はげおは、なにも喋れなかった。ビアンカと再会して、まだ1ヶ月くらいしか経っていない。いったい誰の子供だ。ビアンカは、誰の子供を身ごもっているのだ。
もう人生がズタズタだ。意識朦朧としたまま、サンチョに連れられて王のもとへ行く。親父の弟というから、叔父になる。叔父は、王位をはげおにゆずりたいという。国の運営が巧くいっていないのであろう。責任を、はげおに押し付けようというのか。
なにもかもが嫌になった。
王になる資格を得るために洞窟へ行けといわれるが、そんなことなど知ったことではない。ビアンカは、しばらく動けないだろう。こんなチャンスはない。今しかない。
はげおはモンスターを連れて、旅に出る。「ルーラ」で飛び、船に乗る。
自由だ。
久しぶりに手に入れた、自由だ。
はげおは、自由を満喫する。ちいさなメダルを集める変人の城に行って剣を手に入れたり、砂漠のテルパドール城へ行って、ニセ勇者の墓におまいりしたり。あとはカジノだ。あっというまに資金を使い果たしても、ちっともヘコまない。楽しい。人生を謳歌している。
だが、こんな幸せも長くは続かないのであった。
LVは28。ついにオヤジを抜いた。
たぶん、砂漠の城やカジノなんかをスルーして、いきなり城に行っちゃったからこんなことになってしまったのだと思う。このタイミングで妊娠とかいわれても、絶対主人公の子供ではないって思うでしょう。
はげおの無残な人生は、どこまで堕ちるのであろうか。
楽しみである。
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はげおはカジノにいた。誰もはげおを止めるものはいない。ピエールも「そりゃ! うりゃ!」とか叫ぶだけである。
それにしても虚しい。奴隷から放浪人になり、世界をまたにかけた大冒険野郎として充実した一生を送るつもりだったのだが、すでに行けるところは行き尽くした。まさかこんなにお手軽な世界だったとは思わなかった。城だって、この世界にはたった4つしか存在していない。そのうち1つは、お化け屋敷のテーマパークだ。
地図を見ると、中央にあきらかに怪しい場所がある。記憶が確かなら、はげおが奴隷として満足できる生活を送っていた、某新興宗教の神殿が建設されていた場所だ。誰も行けない場所に神殿をつくるとは、なかなか頭の悪い教祖らしい。
カジノで遊ぶのも飽きたので、いちどグランバニア城に帰ってみようかと思う。ビアンカには逢いたくないが、モンスターたちの装備を整えたい。
深夜に「ルーラ」で飛ぶと、グランバニア城の門は硬く閉ざされていた。入れてくれない。なんてこった。いちおう王族だぞ。こんな城で王になんて絶対なりたくない、とはげおは思った。
仕方がないので、サンチョの小屋に行く。サンチョは優しく迎えてくれたが、食事を終えてベッドの前に立つと、表情が変わった。
はげおは、ベッドに押し倒された。
迂闊だった。忘れていた。サンチョはホモだった。サンチョには、ひとりで逢いにいってはいけなかったのだ。
地獄のような朝を向かえ、はげおは逃げるように城に駆け込んだ。これなら、まだビアンカの方がましだ。すがるような思いで、ビアンカに逢いに行くと、今度はビアンカに押し倒された。
地獄のような朝を向かえ、はげおは逃げるように部屋から出た。そして疑問が確信に変わった。ビアンカは妊娠などしていない。ちっとも腹が出ていない。きっと想像妊娠だったのだろう。
あさはかな策略など、すぐに露見してしまうものである。すこし安心したはげおは、試練の洞窟へ向かうと、あっさりと王家の証をゲットした。意味のわからない仕掛けがあったが、最後まで意味がわからなかった。
グランバニア城に戻ると、大臣が嫌そうな顔をして慇懃無礼に出迎えてくれた。こんなやつ、クビだ。叔父のオジロンは、晴れやかな顔で出迎えてくれた。そんなに王が嫌だったのか。
だがその直後、はげおはまたしてもビアンカの完璧すぎる策略の前に愕然とすることになる。
奥の部屋から、ビアンカの悲鳴が聞こえた。叔父にたきつけられて、階段を駆け登って部屋へ飛び込む。汗をかいて苦しそうなビアンカと、それを心配そうに見守る侍女たち。信じられないことに、陣痛が始まったらしい。
どういうことだ。腹にはなにも入っていなかったはずだ。
そろそろ生まれるので、部屋を出て行けと侍女たちにいわれる。おろおろと、指示に従うはげお。
部屋の外に出て、考え込みながら階段を降る。これはいったいどういうことだ。
まさか! はげおは気づいた。
その直後、赤ん坊の産声がした。はげおには、閻魔大王の断罪の声に聞こえた。
ドアを開けると、そこには赤ん坊が2人。ビアンカとともに、ベッドに大きな赤ん坊が2人いた。
はげおは素早く侍女たちの表情を見た。確信した。やはりそうだ。間違いない。ビアンカと同じ目をしている。
罠だ。ビアンカの恐るべき魔手は、この城の侍女たちをも虜にしていた。おそらく、王の妃になったときに便宜を図るといいふくめ、買収したのだろう。あの赤ん坊は、どこからか誘拐してきたに違いない。
ビアンカ。甘く考えていた。なんて恐ろしい女なのだ。
はげおは、震える手で赤ん坊を抱く。似ていない。はげおとも、ビアンカとも。産まれたてでもない。おそらく誘拐してきた赤ん坊だ。いや、まずしい家庭から、金で買ってきたのかも知れない。
考えられることはひとつ。はげおが王になったなら、ゆっくりと時間をかけてはげおを暗殺するつもりであろう。そしてはげお亡きあと、王位継承権を持つ幼い息子の変わりに、ビアンカ自身が政権を握る。
完璧な策略だ。
そこまで考え抜かれていたとは。
逃げられない。すでに包囲網は完璧だ。王位の禅譲というタイミングに、出産をからませるとは。家臣や兵や民たちは、祝福の気持ちでいっぱいである。わずか数名を除いて、その気持ちに嘘偽りはない。
とても出産を終えたばかりとは思えないくらい元気なビアンカに、子供の名前を決めてくれといわれる。仲の良い夫婦を演じるというわけか。はげおは決めた。この子供たちに罪はない。だが、ビアンカの思い通りにはさせない。叔父や家臣の前で、はげおは大きな声で名前を口にした。
息子の名は、はなげ。
娘の名は、まつげ。
はげおは後頭部に衝撃を受け、気を失った。
気づくと、翌朝になっていた。昨日出産を終えたばかりとは思えないくらい優雅に振舞うビアンカは、はげおの顔を見ると壮絶な顔で睨んだ。はなげ王子にまつげ王女。名前は、決定されていたようだ。
彼らの将来に、すこしだけ同情する。だが、それははげおにしたって同じだ。だいいち、パパはパパスで叔父はオジロンである。鼻毛があるから、はなげ。睫毛があるから、まつげ。まったく問題ない。むしろ王家らしい名前である。ムスコン、ムスメン、とかよりよっぽどマシである。
仰々しい式典が開かれ、王位の禅譲式が始まる。
それなのに、またしてもはげおは普段着である。叔父はしっかりと王冠を頭にのせ、高級シルクの赤い服をまとっている。
赤いマントをかけられた。たったそれだけで、王位を禅譲されたらしい。王冠は、まだ叔父の頭に載せられている。
はげおは、普段着である。モンスターの返り血がついた、ボロボロの旅装束である。そんな姿で、国民へお披露目である。馬車もみこしもなく、徒歩のパレードである。このまま国内をねりあるかなくてはいけないらしい。しかもはげおが先頭に立って歩く。わけがわからない。これは拷問ではないのか。国民の失笑が聞こえる。さらし者である。大臣の悪意を背中に感じる。こんな禅譲式があってたまるか。
国民全体を巻き込む盛大なパーティーが開かれる。驚くべきことに、大臣はビアンカとなにやらクスクス笑いながら話していた。そうか、大臣までも仲間にしていたのか。この式典の悪意は、ビアンカのものでもあったのだ。
はげおは、早々に酔いつぶれた。
薄く目を開ける。どれくらい眠っていたのか。はげおは重い身体を起こすと、あたりを見回す。まだ夢の中にいるようだ、と思った。それも、とびっきりの悪夢だ。周りは酒に酔いつぶれた群集の海。酒と嘔吐と汗の強烈な匂いに満たされた、深夜の城。おぞましい鼾の合唱に、歯軋りが混ざる。
いったいなにが起こったのか。はげおは一瞬で醒めた。そして思い当たることはひとつ。
ビアンカだ。
予測不可能な事態だ。ビアンカはいったいなにを企んでいたのか。はげおは立ち上がると、階段を駆け登ってビアンカの部屋へ向かう。それにしても、玉座よりも上にビアンカの部屋があるというのはどういうことか。
部屋に入ると、青ざめた顔をした侍女が飛び出してきて、はげおにすがりつく。赤ん坊を抱いている。詰問すると、大臣がビアンカともめて、北の方へ飛んでいってしまったという。
仲間割れか。あれほど仲がよさそうだったのに、些細なことで喧嘩でもしたのであろうか。
城の窓から北を見ると、川の向こうに教会がある。そして、地平線のあたりに月に照らされたあからさまに怪しい塔がある。あそこに、ビアンカと大臣の策略のすべてがある。はげおはそう思った。
これは、チャンスかも知れない。大臣もろともビアンカを始末し、本当の自由を手に入れるチャンスかも知れない。はげおがあの塔でビアンカを斬ったとしても、誰も見ているものはいない。モンスターたちは、はげおの味方だ。
今しかない。
大臣の部屋へ堂々と乗り込むと、慣れた手つきで部屋を物色する。みつけた。きっとこの靴だ。そらとぶくつ、と稚拙な字で書いてある。外へ出ると、かなり匂うその靴を、はげおはさっそくはいてみる。足が地面から離れ、城の北にある川を飛び越えた。
はげおは、久しぶりに血が滾っていた。
教会に入ると、モンスターの軍団が塔を目指して行進していたという情報を得る。モンスターが満面の笑みで死んでいた、とも。いったいあの塔でなにが行われているのだろうか。
デモンズタワーと呼ばれる塔へ入る。入り口に頭の悪そうな盗賊の兄弟がいたが、シカトする。
複雑に入り組んだ塔だったが、仲間のモンスターとともに有意義に攻略していく。我ながら強くなったもんだ、とはげおは思った。ビアンカを追い詰めていると思うと、もうそれだけで血沸き肉踊る。
途中に、大臣が倒れていた。ビアンカに返り討ちにあったのだろう、なにやら呻きごとをいうと、血を吹いて死んでしまった。哀れな男だ。ビアンカは女とはいえ、ともに冒険した仲間だ。城でぬくぬくと暮らしていた男が勝てる相手ではない。
いよいよ、最上階へ到着した。やたら口だけは偉そうなオークやキメーラを軽く倒すと、階段を降る。
怪しげな部屋へ出た。
いた。
ビアンカだ。
馬づら、というか馬そのもののモンスターと、なにやらもめている。
チャンスだ。はげおは剣を抜き、襲い掛かった。ビアンカは殺気に気づいたのか、素早く離れる。お楽しみはあとだ。まずは馬からだ。はげおはビアンカに不敵な笑みを送ると、馬に斬りかかる。
馬鹿な。はげおは怯んだ。どんな魔法を使っているのか、この馬にまるで歯が立たない。受ける攻撃はたいしたことはないが、こちらはクリティカルの攻撃でやっとダメージを与えることができる。長期戦になりそうだ。攻撃を耐え切る自信はある。この馬を倒せば、ビアンカを殺せるのだ。いくらでも耐え切ってやる。
ビアンカが、なにかを唱えた。すると、馬に攻撃が通るようになった。馬は驚き、ビアンカは勇者の血を引くものだと叫ぶ。茶番だ。ビアンカは、天空の剣を装備できなかった。
ビアンカの真意はともかく、馬とまともに戦えるようになった。はげおが有利と見て、乗り換えたのか。馬への報復か。どちらでもいい。馬を倒したら、次はビアンカだ。
なにやら意味のわからないたわごとを叫び、馬は死んだ。血がしたたる剣を、はげおは収めない。そのまま、ビアンカに向く。ビアンカの顔が恐怖に歪む。今更どんな言葉を口にしようと、はげおの気持ちは変わらない。今ここで、この悪夢から開放されるのだ。
だが、ビアンカが恐怖したのは、はげおではなかった。
気づくのが遅かった。
背後に現れたそいつは、はげおとビアンカを瞬時に石に変えた。意識はある。だが身体が動かない。声も出せない。仲間のモンスターたちは、そんなはげおを見ると、瞬時に逃げ出してしまった。
仲間だと思っていたモンスターたちも、本当の友達ではなかった……。
落胆した。自分の運命を呪った。ビアンカの殺害に失敗し、モンスターにも逃げられ、石にされてしまった。はげおの人生は、どこまで堕ちてもまだ堕ちていく。とどまることを知らない。
はげおとビアンカを石に変えた男は、世界の破滅を予言し、消えていった。どうにでもなれ。はげおはそう思った。
入り口にいた悪そうな盗賊の兄弟が、はげおが攻略した道を辿ってこの部屋までやってきた。はげおとビアンカの石造を見つけ、かなり高価で売れるだろうと話している。なにしろ本物の人間が石造になったのだ。どんな芸術家が彫ったものよりも、リアルであろう。
盗賊の馬鹿兄弟は、はげおとビアンカの石造を軽々と抱え上げ、塔から脱出する。とんでもないパワーだ。
どこかの街へ輸送され、オークションに出品されるはげお。奴隷の次は人身売買か。脂ぎった顔の富豪が買ってくれた。ビアンカと離れられたのが、唯一の救いだ。
富豪の屋敷の庭に設置されたはげお。指一本すら動かせないが、思考だけはできる。生き地獄だ。
はげおの背後で、なにやら楽しそうな声がする。富豪の子供が初めて歩いたようだ。成長する子供。しかしいくら背後で楽しくやられても、ちっともはげおは見ることができない。拷問に近い。
春になり、夏になり、秋になり、何度目かの冬がくる。
はげおの背後で、悲鳴がした。はげおには見えないが、なにか事件が起こっている。悲しみの声が聞こえ、はげおは富豪に蹴り倒された。もはや風景を楽しむこともできず、地面を眺めるだけになった。
目を瞑ることができた。そう思うことにした。
はげおは、考えるのをやめた。
うーん。
こんなに酷いストーリーだったとは。先が楽しみじゃあないか。
それにしても、石像時代はきびしかった。淡々と画面が流れるのを、強制的に見せられる。早送りができないかとじたばたしてみたけど、どうにもならなかった。
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どれくらい時が経ったのだろうか。石像になったはげおは、懐かしい声を耳にした。懐かしいが、嫌いな声だ。
取引が行われている。はげおが見ることができるのは、地面の土だけだ。いったいだれがはげおを買い取ったのだろうか。この懐かしい嫌な声の主のことが思い出せない。
思い出したくなかっただけだった。倒されていたはげおが起こされると、あの懐かしいホモのデブが視界に入った。サンチョだ。年齢不詳のこのデブは、はげおを慈しむような目で見ている。
子供の声がした。視界には入らないが、子供がいる。2人。
奇跡が起こった。
はげおは、石像から開放された。人間に戻ったのだ。視界が広がる。空気を肌で感じられる。太陽の暖かさを感じられる。指が動かせる。サンチョの汗臭い体臭も匂う。
予期せぬ声を聞いた。お父さん。サンチョとともにやってきた男の子と女の子は、はげおのことをお父さんと呼んだ。
頭が混乱する。この子供は、まさかあのときの。
問いただす間もなく、「ルーラ」で飛ばされるはげお。ぽかんと立ち尽くす富豪の顔が印象的だった。
グランバニア城に到着すると、人々は国王であるはげおの帰還を歓迎してくれた。
あれから、もう8年も経過していた。叔父のオジロンはやっと王冠を外したらしく、摂政として国を維持してくれていたらしい。そういえば、はげおは王らしいことをひとつもしていなかった。国民ではげおのことを知らないひともいるだろう。なにしろ、たった一度禅譲式を執り行って顔を見せただけなのだ。
城の雰囲気で、ビアンカがいないことがわかる。大臣とビアンカがいないだけで、こんなにも城の雰囲気が変わるのか。サンチョの生暖かい視線だけが不快だが。
男の子と女の子は、やはりはなげとまつげであった。とんでもない名前をつけられたのにも関わらず、素直にスクスクと育ったらしい。この純真な瞳を見ても、ビアンカの血を引いていないのだとわかる。
更に驚くべきことに、父のパパスが求めていた勇者の血を、はなげは引いているという。あの伝説の、天空の剣を装備できるというのだ。なんということだ。どこから拉致してきた子供か知らないが、こんな偶然があるとは。
はなげとまつげは、執拗なほどなついてくる。実の子供ではないとはいえ、可愛いものだ。気丈に振舞っているが、寂しくて仕方がなかったに違いない。なにしろ、王族である上に、こんな名前である。きっと友達もいないのであろう。まつげなど、モンスターが友達だといっている。
子供たちは、お母さんを探して救い出すのだといっている。はげおは、ビアンカとは逢わせたくないと思った。この子供たちの人生を狂わせてはいけない。そう思った。
まつげに腕を引かれ、外に出てみて驚いた。あの御者席のない馬車と、男色家の白馬がそこにいた。馬車の中には、あの日はげおを見限って逃げ出したモンスターたちが入っていた。今では、まつげの友達らしい。
馬車の中で萎縮した目をしているモンスターたちを、はげおは許そうと思った。所詮モンスターなのだ。友情を求めようということの方が無理がある。まつげにも、早く気づいてもらいたい。
子供たちに押し切られ、ビアンカを探すという名目で旅に出る。こんな国王を貰った国民は不幸であると思うが、実際はオジロンが政治を仕切っているのでまったく問題はない。王など、ただの飾りなのだ。
はげおは、「ルーラ」でオラクルベリーへ飛ぶ。久しぶりに自由になったのだ。精一杯遊びたい。
子供たちを放置して、スロットに明け暮れる。ダメな親であるとは思うのだが、もともと血が繋がっていないのだから義務感も責任感もない。裏ルートで入手した攻略法を記したアンチョコを、店員にバレないようにこっそりと見ながら、確実にスロットで儲けていく。そして、ついにメダル100万枚を達成した。
メタルキングの剣を、数本入手する。はなげは天空の剣が使えるので、この最強の剣はモンスターに持たせた。まつげには、グリンガムのむちを与えた。瞳を輝かせて素直に喜ぶまつげ見ると、自分がどんなに薄汚れた大人なのかと思い、鬱になる。
思い起こせば、幼少の頃から放浪の身であった。唯一定職に就いたといえば、奴隷だ。それからまた放浪の身。そしてビアンカの魔手に落ち、挙句に石像にされた。こんな人生では、まともな人間に育つわけがない。
はげおは自虐的な笑みを浮かべた。
そして、愛が欲しい。そう思った。
まつげ。
そうだ、石像になったお蔭で、まつげとは12歳しか離れていない。20歳と8歳。10年経てば、30歳と18歳。十分許容範囲内ではないか。素材は良い。これからまつげを自分好みの女性に育てれば、素晴らしい未来を手に入れることができるのではないか。はげおは、このアイディアに興奮した。
カジノを出ると、ラインハット城へ「ルーラ」で飛ぶ。久しぶりにヘンリーに逢いに行くと、彼の息子がいた。昔のヘンリーにそっくりな生意気な子供で、まつげはかなり嫌っていた。マリアとは対照的に、ヘンリーはやつれていた。いろいろと苦労が多いのだろう。
しばらく放浪し、自由を満喫する。
はなげが勇者であることを思い出したので、砂漠の国テルパドールの城へ行く。女王が守っていた、天空の兜をはなげに装備させる。やはりはなげは本物の勇者だ。
いったんグランバニア城に戻る。相変わらず、国王がいなくてもなんの問題もない国だ。
自室でまつげを育成する計画を練っていると、お母さんを助けにいこうと子供たちがうるさい。あんな悪魔を助けたら、それこそ世界の終焉だと思うのだが、子供にそのことを話しても理解できないだろう。はげおは仕方なく、重い腰を上げる。
子供たちとサンチョで、だいたいの見当をつけていたらしい。子供たちは、エルヘブンの村へ行きたいとせがむ。そこに、なにかヒントがあるという。
はげおは子供たちをつれて、旅立つ。
この先になにが待ち受けるのか。はげおに幸運は訪れるのか。それは、神のみぞ知ることだ。
それにしても、先人たちの努力と好奇心には頭が下がる。カジノのメダル100万枚ゲットの方法。しっかりと分析、解析されており、最初のスロットの位置で、かなり先までの出目が記されていた。
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