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      <title>夜空に瞬く数多の星よ</title>
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      <description>　ライトノベルを書いていきます。
　あんまり長くありません。短編ともいえないくらいの長さの小説です。気楽に読んでいただけると嬉しいです。
　モリモリと精力的に、とはいきませんけど、なるべく思いついたら腐らないうちに書いてしまいたいと思っています。
　習作みたいなものが多いです。いろいろと実験的なこともしちゃう予定です。イラストなんかも載せたいなーと思っています。
　更新は不定期なんです。
　頑張りますので、よろしくお願いします。</description>
      <language>ja</language>
      <copyright>Copyright 2007</copyright>
      <lastBuildDate>Mon, 20 Aug 2007 16:56:25 +0900</lastBuildDate>
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            <item>
         <title>俺の秋刀魚女</title>
         <description>　俺は満足げに頷き、明日の勝利を確信すると、誰もいなくなった教室を出て鍵を閉め、心地よい疲労感を味わいながら下駄箱へ向かった。
　すると、俺の視界に、わけのわからないものが飛び込んできた。
　ぞっとして立ち止まる。
　――秋刀魚、だ。
　下駄箱の陰から半身を覗かせてきょろきょろと辺りを窺っているのは、まごうことなく秋刀魚だった。しかも体長は一六〇センチくらいあり、差し込む夕陽を浴びて橙色にてかっている。
　いくら食欲の秋だからといって、いくら脂がのっていたって、こんな秋刀魚は食べたくない。
「な、なんだお前は!?」俺の声は、驚きと恐怖のためにかすれていた。
　秋刀魚は死んだ魚のような目を泳がせ、両手で顔の辺りを押さえてやっと俺の方を向くと、その場に跳び上がった。「きゃっ!?　ま、まだ残ってたの？」
　喋りやがったよ、秋刀魚が。
　ていうか、秋刀魚の身体から出ている素足は、どう見ても人間のものだ。上履きの先っちょの色は、俺と同じ赤。つまり俺と同じく高校二年生。同級生に、秋刀魚人間なんかいただろうか。
「いや、お前、何者だ？　こんなとこでなにしてんだ？」俺は渋い顔を見せる。
「あ、あなたには関係ないでしょ！」秋刀魚はぷいっと顔を逸らしたが、もじもじとした後、いいにくそうな声で「……逃げてきたの」といった。
　そういうことか。
　俺は、ピンときた。声を聞いてピンときた。これはチャンスだ。俺はほくそ笑み、この秋刀魚を煮てやろうか焼いてやろうかと舌なめずりをする。
　そのとき、暗い廊下の奥から、どたどたと足音が迫ってきた。白衣を着た女子が数人。
「小林！　邪魔しないで。彼女は、私のクラスのものよ」眼鏡をかけた女子が、偉そうな顔でそういった。隣のクラスの委員長だ。
　俺は、秋刀魚と眼鏡娘の間に立つ。「ふん。この秋刀魚人間は、明日の秘密兵器、ってとこか。でも、脱走されたみたいだな」
「うるさいわね！　明日は、私たちのクラスが勝つわ！」
「そ、そうなのだ！　明日は、我々が勝つのだ！　……もういいから、あっちいって！」秋刀魚が、怒ったような声を出した。
「さて、どうかな」俺はさっと身をひるがえし、秋刀魚の手をぐいっと引いた。「ついてこい！」
「え？　ちょ、なによっ!?　放して！」秋刀魚は僅かに抵抗したが、すぐに俺に引きずられるように走り出す。
「こらーっ、小林ーっ！　待ちなさーいっ！」
　眼鏡女たちが、追ってくる。しかし、足は遅い。
　俺は秋刀魚の手を強く握りしめたまま、階段を駆け上り、廊下を疾走し、素早く角を曲がり、男子トイレに駆け込んだ。個室に逃げ込み、静かにドアを閉める。
「え？　ここどこ？　よく見えない」
「どこでもいいだろ」秋刀魚は、視界が悪いようだ。「嫌なんだろ、秋刀魚」
「嫌だけど、あなたには関係ないじゃん！」
「関係ある」俺は洋式便器の蓋を閉め、秋刀魚を座らせる。「俺が解放してやる。感謝しろよ」
　俺は秋刀魚の背中のチャックを、下げる。
「ぷはっ！」といって出てきたのは、体操着を着た幼なじみの女の子。さらりと、長い髪が揺れる。
　当たり前だが、秋刀魚は着ぐるみだったのだ。
「やっぱ片桐か。声でわかったぞ」
「う。……ありがと、小林」気まずそうな顔で、片桐はつぶやいた。
　彼女のシャンプーの香りが、鼻をつく。
　そういえば、狭い個室に、ふたりきり、だ。俺は急に恥ずかしくなった。片桐のことは、ずっと妹みたいに思ってたけど、最近やけに女っぽくなってきた。
「べ、別にお前を助けたわけじゃないからな。明日の文化祭は、俺たちのクラスが勝つ。そのために、お前の……、つか、なんなんだ？　秋刀魚？」
「あたしたちのクラスは、コスプレ喫茶をやるの。それで、この着ぐるみ」
「は？　……コスプレの意味、間違えてねーか？」
「うるさいな。あたしだって、嫌だっていったんだけど、委員長が……」
　上目遣いで俺を見る片桐。綺麗な肌だな、とか思ったら、ドキドキしてきた。
「あ、ああ。あいつは、ひとの意見とかきかねーからな。去年同じクラスだったから、よく知ってる。顔は可愛いけど、きっついんだよな」
　不意に表情を変え、口を尖らせた片桐は、俺の足をげしっと踏んづけた。
「ぐあ!?　なにすんだ！」
「うるさーい！　助けてくれたのはありがたいけど、あなたは敵なんだから！」
「なんだそりゃ」
「いいの！　」周りを見て、片桐はやっと気づいたようだ。「え？　ここって、もしかして……」
「ああ、男子トイレだ。ここなら、あいつらもこな」
「ばかーっ！」
　ばきっ！　片桐のナイスなストレートが、俺の顔面を捕らえる。鼻血が出てきた。
　顔を赤くした彼女は、秋刀魚の着ぐるみを引きずって、個室から逃げ出した。
「ったく、相変わらず乱暴な奴だぜ」俺はトイレットペーパーを鼻の穴に突っ込んで、男子トイレから出る。
　片桐が、廊下で待っていた。じとーっとした目で、俺を見る。
「あれ。まだいたのか」
「うん。一緒にかえろ？」
　つ、と俺の袖を引く。
「おっけ。じゃあ、着替えてこいよ」
「いいよ。委員長に見つかると面倒くさいから。このままかえろ」ひょいと、片桐は秋刀魚の着ぐるみを肩に担ぐ。
「男らしいなあ、お前は」
「もう。うるさいってば」
　不満そうな顔で、片桐は俺の頬をつねる。
「あーっ！　いた！　小林ーっ！　私の秋刀魚女を帰しなさーいっ！」
　廊下の奥から、委員長の声が轟いた。
　俺たちは、全速力で逃げ出した。</description>
         <link>http://hagepower.net/kou/2007/08/post_9.html</link>
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                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">悪魔</category>
        
                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">ライトノベル</category>
                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">学校</category>
                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
        
         <pubDate>Mon, 20 Aug 2007 16:56:25 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>あとがき　一作目～五作目</title>
         <description><![CDATA[　はじめまして。星野弧絵です。
　このブログで、オリジナルのライトノベルを書いています。短編ばっかりです。
　衝撃的なことに、ブログを起ち上げて半月くらい経ちましたが、五月十八日現在、ユニークアクセス数が４件という、素晴らしい結果になりました。
　腰が抜けそうです。
　腰砕けです。
　なんかこう、どうにかしなくちゃなと思い、軽く焦っているんですが、なるべくライトノベル以外は載せたくないので、困りました。ライトノベルなので、イラストは載せるつもりなんですが、まだペンタブレット買ってません。
　そもそも、オリジナルのライトノベルだけっていうのが、間違っているのかも知れません。
　コンセプトからしてだだ滑りです。二次創作とか入れた方がいいんじゃないでしょうか。いや、そういう問題でもないような気がします。
　だけど、このコンセプトを曲げたくはありません。頑固一徹。初志貫徹。ライトノベル集を死守します。
　んじゃあ、あとがきならいいかな、とか考えました。あとがきも、小説の一部です。
　あとがきって苦手なんですけど、背に腹は代えられません。更新してpingを飛ばすのです。

　というわけで、自画自賛の解説を書きます。
　作品は、全部面白いです（キッパリ）。
　あっ。ごめんなさい。

<strong><a href="http://hagepower.net/kou/2007/04/post.html">鼻毛出てるよ</a></strong>
　記念すべき第一作目。ある意味処女作。いいのか、こんなんで。
　二～三時間で書き上げて、ちょこっと推敲。あんまし手をかけてません。
　実話じゃありませんから。
　とりあえずなんか書きたかったので、思いつきだけで書きました。やり方によってはもっと劇的にできたような気がします。まあ、ネタがネタなんで、これ以上どうにもしませんが。あーでもどうにかしたい。

<strong><a href="http://hagepower.net/kou/2007/04/post_1.html">脇の下のビームで</a></strong>
　二作目。
　これも二～三時間で書き上げて、ちょこっと推敲。
　脇の下からビームが出たら困りますよね？　特に女の子なら。
　ワンアイディアの投げっ放し短編。いろんな意味で、中途半端かつ消化不良気味。でも、こーゆー感じなのが好きなんです。投げっ放しサイコー。ごめんなさい。

<strong><a href="http://hagepower.net/kou/2007/05/post_2.html">Ｋの力</a></strong>
　三作目。気に入っている作品。下品率、上がってます。
　初稿に四～五時間かかったはず。それから数日に渡ってかなり推敲しました。
　こ、これも実話じゃありませんから。
　今のところ、一番分量の多い作品。短編にしては、冒頭の引きが弱いです。カレラが出てくるまで読んでくれれば、あとはずばーっと行けると思います。ラストでうははと笑っていただけたら、嬉しいです。

<strong><a href="http://hagepower.net/kou/2007/05/post_5.html">俺たちの詩</a></strong>
　四作目。これも気に入ってます。
　三～四時間くらい。推敲は、時間を空けて何度かやりました。
　バカばっかりです。詩に、気合いを込めました。
　コント風の短編。こんな感じのネタ、マンガで読んだ気がします。インスパイアみたいな感じです。でもこのオチ、どーだろ。

<strong><a href="http://hagepower.net/kou/2007/05/post_6.html">悪魔の顔</a></strong>
　五作目。
　二～三時間くらい。推敲はあんまししてません。
　よくあるシチュエーションに、あんまりなさそうな対応。
　なんとなくで書き始めて、なんとなくできた作品なんですけど、読み直してみたら、コレけっこーイケてるんじゃね？　とか思えるほど気に入る作品になりました。後先考えてない、シチュエーションだけの投げっ放し短編ですが。

　えー、こうして見ると、基本的に投げっ放しな短編ばっかりです。このノリは、短編というか、ショートショートです。分量的にも。
　意識的に「！」とか「？」とか「!?」を使ってません。一般的な小説っぽく書いてみました。そのせいか、勢いとかなくなってます。失敗かも。
　次作からは、もっと読みやすさを考慮しつつ、「――」なんかも使ってみようかと考えています。

　これからも、巷で噂になるくらい、切磋琢磨して頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。
　目指せ、ユニークアクセス数１０件！]]></description>
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                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">（あとがき）</category>
        
                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">ライトノベル</category>
        
         <pubDate>Fri, 18 May 2007 16:52:40 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>悪魔の顔</title>
         <description>「おら。起きろ。おめーの魂をもらいにきた」
　ボクが目を開けると、そこに悪魔がいた。ベッドで寝ているボクの上にかぶさるように、悪魔がいたのだ。
　暗い部屋。壁に掛けた時計は、丑三つ時を指す。
　どうして寝ぼけ眼のボクが、彼をひと目見て悪魔だと判断したかというと、それはもう悪魔としかいいようのない黒く邪悪な痩躯だったからで、つまりごく一般的な悪魔の格好をしていたからだ。声も台詞もありきたりだし、ぴっちりした黒い全身タイツとか尖った耳なんかも古くさい、古典的な悪魔。今時分、もう少し個性を持たないと仕事がなくなっちゃうんじゃないかな、なんて、ひとごとながら心配してしまう。
「うるせー。余計なお世話だ」
　さすが悪魔。ボクの心を読んだらしい。変態の悪魔のくせに。スケベめ。
「ふざけんな。悪魔が人間になんか手を出すわけねーだろ。インキュバスじゃあるめーし」
　サキュバスといわないところがさすがだね。で、ボクになんの用。と、ボクは心の中で思う。
「心の中で思う。とかいっちゃってんじゃねーよ。横着すんな。ちゃんと口開いて喋れ」
　キミの心を読む能力って凄いけど、読まれる方は楽だね。なにしろ、口とか声帯とか腹筋とか使わなくても会話ができるんだもの。あー楽。喋らないでいいって楽。キミは大変だね、口を開いて声帯使って腹筋まで使って喋らなくちゃいけないだなんて。お疲れ様。と、ボクはベッドに寝そべったままで思う。
「うるせーよ。キミとかいうんじゃねー」悪魔は、苛々ただしげに声を荒げた。「もー少しびびれよ。恐がれよ。泣けよ。わめけよ。叫べよ。悪魔が目の前にいんだぞ。助けてー、だろ。許してー、だろ。もしくは疑えよ。悪魔なんかいるわけないー、とか。これは夢だー、とか。なに達観しちゃってんだよ。つまんねー奴だなおめーは」
　だって、泣いたってわめいたって叫んだって疑ったって、ボクの魂を取ってっちゃうんでしょ。意味ないよ。疲れるだけ。無駄無駄。
「効率ばっかもとめてんなよ」悪魔は、顔を歪めた。「おめー、中学生だろ。そんな歳からそんなんで、この先どーすんだよ。ろくな大人になんねーぞ。親が泣くぞ」
　だって、死ぬんでしょ。これから。
「そーだけどよ」渋い顔をして、悪魔は顎を撫でた。「どーも調子狂っちゃうぜ」
　可哀想な悪魔。同情しちゃう。
「おめーだろが」悪魔は怒鳴る。「なんかこう、辞世の句とかねーのか。最後にひとつだけ頼みがある、とかすがってこいよ」腕を広げた。
　へー。頼み聞いてくれるの。悪魔のくせに。
「いや、聞かねー」悪魔は首を振った。
　なにそれ。頭悪そうなこというね。あ、だから悪魔っていうのか。頭の悪い魔物。
「ちげーよ」悪魔は唾を飛ばした。「悪魔は悪魔だよ。頭が悪いんじゃねー。やることなすこと全部悪い、徹底的に悪い悪魔のことだよ、悪魔ってーのはよ」
　やっぱ頭悪いよ。あと顔も。
「うるせえ。顔のことはいうな」さっと、悪魔は体を引いた。「ちくしょう。顔のことはいうな」
　確かに、徹底的に顔が悪いね。実は、最初キミを見たとき、泣き叫ぶ寸前だったんだ。キミのそのデッサンの崩れた酷い顔で。
「嘘つけ」悪魔の声が小さくなった。「嘘だといってくれ」
　心の中で嘘をつくなんて器用なこと、ボクにはできないよ。思ってることを勝手に聞いてるだけじゃない。だから、もうこれ以上ボクの心を覗いちゃ駄目だよ。
　それにしても、ぶさいくな顔だなあ。チョーブサメンだ。信じられないのは、こいつの顔だよ。骨格からして間違ってるね。どうやったら、こんなに醜くなれるんだろう。努力や素質だけじゃ、あそこまで悪くなれないよ。なにあの目。まるで相撲取りの下痢だね。いや、下水道にあるドブネズミの巣みたい。道ばたに寝そべってたら、間違いなくゴミだと思うね。なにあの鼻。臭ってきそうなほどの醜男。その、牛乳を拭いたぞうきんみたいな顔を見せるだけで、全人類が逃走するよ。なにあの口。たぶん、悪魔の中でもダントツで悪い顔だな。古今東西、こいつほど顔の悪い悪魔はいないはずだよ。
「そこまでいうの」悪魔は、めそめそと泣き始めた。「どこまでいうの」
　心を覗いちゃ駄目だっていったのに。ていうか、仕事しなよ。なに泣いてんの。酷い顔がぐちゃぐちゃじゃない。吐瀉物みたい。わかった。その強烈にぶさいくな顔で、ボクを殺す気なんでしょ。
「もうやめてよ」涙と鼻水を滝のように流しながら、悪魔はつぶやく。「顔のことはやめて」
　早くボクを殺しなよ。顔を近づけてくれれば、ショック死するよ。急性心不全で死ぬよ。ああ、世の中に多々起きてる急性心不全って、全部キミが起こしてたんだね。その強烈に酷い顔で。
　そう思いながら、ボクはむくりと起きあがる。悪魔は、ばばっと飛び退った。
　ボクは、悪魔の顔をじっとみた。
　ボクは、白目を剥いて、ぱんたんと倒れた。
「わあ。死んだ。オレの顔を見て死んだ」悪魔は泣き叫ぶ。「顔で殺すなんて、そんなつもりなかったのに。魂を掴み損ねた」ばたばたと、暴れる。「どうしよう。どうしよう」
　悪魔はしばらく部屋の中をうろうろしていたが、肩を落として大きなため息をつくと、ふらふらと窓から外へ飛んで行ってしまった。
　カーテンが、揺れた。冷たい風が、すうっと流れてきた。
　ボクは、ぱかっと目を開けると、枕元に置いてあった携帯電話を手に取る。あの悪魔は、間違いなく麻美だ。コール音が鳴る。十三回待たされて、やっと相手が出た。
『……はい』消え入るような、小さな声。
「麻美。ボクだよ。わかってるか」ボクは、眉間に皺を寄せる。「今、悪魔を追い返した。ったく、いいかげんにしてくれないかな。今日のはバカで助かったけど、毎回巧くいくわけじゃないんだかんね」
『うっさいボケ。死ね。浮気者』可愛らしいか細い声が、そういった。『内臓ぶちまけて、死ねガチャン』
　電話が切れると同時に、窓に黒い影が現れた。
「オレはアクマだ。貴様の魂をもらいにきた」
　やたらシャープなシルエットの悪魔が、そういった。こいつは、おそらく保奈美の召還した奴だろう。さっきみたいな、口車じゃ相手できない。ボクは身構えると、指にはめたリングを光らせる。瞬時に、ピンク色に光るビームサーベルが、ボクの手に収まる。
「……貴様、滅魔師か」悪魔が、顔色を曇らせる。
「ただの女好きだよ。好きになる娘が、たまたまみんな召還師だった、ってだけ」
　ボクは、問答無用で斬り伏せた。</description>
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                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">悪魔</category>
        
                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">ライトノベル</category>
                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
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         <pubDate>Tue, 15 May 2007 14:54:57 +0900</pubDate>
      </item>
            <item>
         <title>俺たちの詩</title>
         <description>　俺の部屋に、ジョージとミラーとサンジとカヲリが集まった。
「ヘイ、ビデ。恥ずかしがらずに、ちゃんと書けたか」と、頭髪をポマードでテカテカにしたジョージが、俺にいった。
「当然だろ。おめーらこそ、ちゃんと書いてきたんだろうなあ」俺はそういいながら、折りたたみ式のテーブルを広げた。「ヤワなもの書いてきやがったら、許さねーぞ」
「ハッ。誰にいってんだよ、ビデ。泣かすぞ」長髪のサンジは、相変わらずシブイ革ジャンを着ているけど、もう初夏だし、今日はやけに暑いから、汗だくだ。タンクトップに包まれた丸い腹まで、びっしょりだ。
「まあいい」俺は、指を鳴らした。「今日は、俺たちのバンドのオリジナル曲に使う詩を、決める。一番ハードでロックでパンキッシュな詩を、採用する」
　そうだ。今日は大事な日なのだ。俺たちは、来月の高校の文化祭で、最高で最強のロックンロールを演奏するのだ。
　ギターを買う予定のジョージは鼻で笑い、ベースを買おうと思ったことのあるミラーは不適な笑みを浮かべ、ドラムを見たことがあるサンジは目を伏せ、いつも鼻声のカヲリはもじもじした。そんな奴らを前に、キーボードで演奏したり打ち込みをした夢を見たことがある俺は、大人びた顔で肩をすくめてみせる。
　窓の外で、蝉が鳴き始めた。
　俺の部屋の気温は、五人が集まったことにより、ぐんぐん上昇している。この部屋には、クーラーなんて気の利いたものはないのだ。
「始めようぜ。誰から詩を発表する」ミラーは、ぱつんぱつんの黒いジーンズの後ろポケットからノートを取り出し、テーブルに叩き付けた。「オレはいつでもいいぜ」
　俺は、危なく声を出してしまうところだった。ミラーのノートは、適度に破れ目があり、適度に薄汚れていて、適度に格好がよかったのだ。表紙にも、英文が走り書きされている。字が下手すぎて読めないが、確実に格好いい。
「ファック。汚ねーノートだぜ」そういって、ジョージは黒いジャケットの内ポケットから、手帳を取り出した。「ま。オレの詩にゃあ、誰も勝てねーだろうがな」得意げな顔で、ぱらぱらと捲る。
　またしても、俺は声を出してしまいそうになった。ジョージの手帳も、適度に能率的で、適度に使い込まれていて、適度に格好がよかったのだ。表紙には、２００７と金字で印刷されている。
「ビ、ビデ。リーダーから、は、発表したら、いいじゃない」サンジは蚊が鳴くような声でそうどもると、テーブルのそばに正座した。やたら背筋がいい。
　ジョージは無言で頷くと、壁に背をつけて腰を下ろし、立て膝になる。ジャケットを脱いだら、栄養失調みたいな痩躯があらわになった。
　ミラーは窓辺に座り、風を嗅ぐみたいな顔で外を眺めた。この時期に長髪で革ジャンは、苦しいのだろう。たっぷりとした贅肉もあるし。こっそりと、手で扇いでいる。
　カヲリは、俺のベッドに腰を下ろした。黒髪をツインテールにした紅一点の彼女は、今日も顔色が悪い。白い長袖のシャツを着ているけど、暑くないのだろうか。
「いいぜ。じゃあ、このバンドのリーダーである、俺からいく」俺は人差し指で眼鏡をくいっといじると、机の椅子に落ち着き、パソコンのキーボードを叩いた。
　机の横の棚に置いたプリンタが、唸り声を上げる。俺は、内心ほくそ笑む。パソコンで書き、印刷する。これは、かなり格好いいはずだ。なにしろ、この中でパソコンを持っているのは、俺だけなのだ。さりげなくメンバーを見回すと、誰もが落ち着かなげな素振りをしていた。
　先制パンチは決まった。次は、とどめの一撃だ。俺の詩は、完璧だ。ここにいる奴らは、全員感動の涙を流すだろう。拍手喝采することだろう。俺は、天才なのだ。天才だったのだ。詩を書くのは始めてだったが、完成したものを見て、目を疑った。プロだって、これほど素晴らしい作品は書けまい。
　俺は、自信作が印字されたＡ４の紙を、テーブルの上に放る。


　『俺のロケンロール』

　　　俺は俺だぜ　ロケンロール
　　　誰も俺は止められないぜ　イエー！　アイウォンチュー
　　　まだ１６だけど、心は少年　なんでもできるぜ　なんでもやるぜ　何故なら最強
　　　右に行けといわれたら、左に曲がるぜ　俺はいつでも斜め上さ
　　　だけどアソコは右曲がりなのさー　オーイエー！
　　　油断したなら刺すぜ　火傷するぜ　俺はいつでもマジだぜ　ベイビー　
　　　さりげなく　そうさ　さりげなく生きるのさ　アイラビュー
　　　惚れるなよ　ガールズ
　　　俺が俺のために贈る　俺の詩　ザ・俺　超俺　この俺こそが、俺なのさ　俺
　　　俺最高　俺俺俺俺俺最高　俺にシビレて　俺シビレ
　　　これが俺のロケンロール


　　俺の詩が書かれたＡ４の紙は、そっとテーブルに戻された。
「……次は誰だ」ミラーが、革ジャンを脱ぎながら、そういった。二の腕が、たぷんと揺れた。
　俺は、俺の詩の感想を聞きたかった。自信作の感触を知りたかった。しかし、それはこの部屋を満たす空気を読めば、察することができる。僅かなミスだ。ほんの僅かな傷が、全体の印象を悪くした。天才の俺には、わかる。わかってしまう。そう。ロケンロールではなく、ロックンロールにすべきだったのだ。悔やんでも、悔やみ切れない。
「ヘイ、サンジ。次はオレの番だ」ジョージが、握っただけで折れそうな腕を振って、手帳を投げた。「イエス。どれでもいいぜ。好きなページをオープンしな」
　自信に満ち溢れた顔だ。俺は密かに緊張した。
　サンジは、おずおずとした指で、受け取った２００７年度版能率手帳を開く。それは、カレンダーを無視して乱雑に書き殴られていた。


　『ベイビィ　ベイベベイベ　ベイビィ』

　　　ヘイ！　ベイビィ　ベイベベイベ　ベイビィ　ベイビィ　ベイベベイベ　ベイビィ
　　　オーマイガッ　ファックファック　マザーファッカー　アスホール　ユー
　　　ゴッドセイブザクイーン　ヘルプ　ネバー
　　　イエアー！　リビニガプレイヤー　ウェルカムトゥーザジャングル
　　　スメルズライクティーンスピリット　ギヴイットアウェイ
　　　シンクロニシティ　プリーズテルミーナウ　ホットフォーティチャー
　　　アフターバーナー　シャウト　スレッジハンマー　キッス
　　　オウ！　マイフェイバリットイノセンス！
　　　ヘイ！　ベイビィ　ベイベベイベ　ベイビィ　ベイビィ　ベイベベイベ　ベイビィ


　　ジョージの手帳は、そっとテーブルに戻された。
「……次いこうぜ」ミラーの二の腕が、たぷんと揺れた。
「うひ。うひひひ」サンジが、笑い出した。「じ、じゃあ、お、おれのを、見せるよ。ビデや、ジョージよりは、マ、マシかも」
　サンジのその言葉に、俺とジョージは憤然と立ち上がる。ジョージはそのまま脚がつり、ヒギィと呻いて倒れた。「マイガッ。つったつった。脚つった」
「おい、サンジ。どういう意味だ」俺は、ギリッと歯を鳴らした。
「ま、まあ、いいじゃない。お、おれの詩を、見てよ」サンジは、俺にノートを差し出した。なんの変哲もない、ルーズリーフだ。「み、身の程が、し、知れると、お、思うよ」
　この野郎と、俺は思う。どもりで気が弱いくせに、なんて自信に満ちた顔をしてやがるんだこいつは。どんな詩を書いたか知らんが、どうせ軟弱なものに決まっている。たっぷりと批評してやる。


　『私はこのように聞いています』

　　　観自在菩薩は　行深般若波羅蜜多する時
　　　照見五蘊皆空で　度一切苦厄なのさ　
　　　舎利子よ
　　　色不は異空で　空不は異色さ
　　　そして色即は是空で　空即は是色だったのさ
　　　つまり受想行識亦復如是ということ
　　　舎利子よ
　　　だからそれは是諸法空相なのさ


「般若波羅蜜多心経かよ」俺は思いっ切り叫んだ。眼鏡がずり落ちた。「読誦経典かよ」
「お前はゴータマか」ミラーが裏声になった。「お前はシッタールタか」
「ファーック。二七六文字の叡智を侮辱かよ」ジョージがうずくまりながら唾を飛ばした。「シーット。完全なる智慧を陵辱かよ」
「……みんなよく知ってるね」カヲリが、ぽつりとつぶやいた。
　俺たちは顔を見合わせる。
　別に意味も他意もない。俺たちは中学時代、「はんにゃ」という響きに面白さを感じて、ちょっと調べたりしただけだ。
「し、知らねーよ。ロックンローラーが大乗仏教なんて、似合わないぜ」ミラーが、そう吐き捨てた。
「まあいい。次は、ミラーだ」俺は、ミラーを指さした。「お前の魂を見せろ」
「ハッ。腰抜かすんじゃねーぞ」ミラーは、たぷんと腹を揺らした。
　

　『わがままジュリエッタ』


「つか、タイトルしか読めねーぞ。ジーザス」脚をさすりながら、ジョージが吠えた。
「字、汚すぎ」俺にも読めない。昔からミラーの字は下手くそだったが、今やミミズがのた打ち回る領域を超えて、芸術的ですらあった。
「し、しかも、な、なんか、と、盗作っぽ」サンジは、くすくす笑った。
「うるせえな。ちゃんと読めよ。すっげーいい詩なんだぞ」ミラーは、自分のノートを奪い取った。「オレにも読めねー」ノートを床に叩き付けた。
　俺は、安心していた。どいつもこいつも、レベルが低い。間違いなく、俺の詩が一番イケている。ロケンロールをロックンロールに直せば、誰もが認める完璧なものに仕上がるだろう。パソコンの中のテキストを修正するだけだから、今すぐにでも再提示可能だ。
「最後は、わたしね」と、カヲリがいった。
　汗だくの俺たちは、ざっと身構える。
　そうだ、まだ我がバンドの紅一点、メインヴォーカルのカヲリが残っていた。ここは俺と彼女の一騎討ちかも知れない。いや、カヲリは優等生で、国語の成績はいいが、詩はどうだろう。学校の授業じゃ、センスまでは教えてくれない。
　顔色の悪いカヲリは、鞄の中から可愛らしいデザインのノートを取り出した。長袖のシャツに包まれた腕を伸ばし、俺に渡す。
　彼女は不健康そうな顔色をしているが、ルックスはいい。俺の趣味からしても、上の下といったところだ。カノジョにしてやってもいい、とすら思っている。ただ、ここにいる他の連中は中学時代からの悪友だったが、カヲリだけは高校で知り合った。学校での彼女は知っているけど、プライベートではどんな女子なのか、まだわからないところがある。詩は、ひとの心を写し出す。彼女が書いた詩を読めば、彼女の内面が伺い知れるだろう。
　俺は、ぱらりとノートをめくった。


　『死ねばいいのに』

　　　朝　昨日吐いた血海で顔を洗う　鉄の味　腐った匂い
　　　大腸で歯を磨く　にちょっとした歯ごたえ　ガムみたい　味はわからない
　　　朝食　脳味噌　すっぱい
　　　昼食　唇　にがい吐
　　　夕食　眼球　からい
　　　夜食　わたし　死ぬ
　　　救って
　　　死体になったらお願いします　中身を出して　洗って
　　　腕を切る　腕を切る　腕を切る　腕を切る　切る　切る　切る
　　　カッターナイフ　腕を切る　血が流れる　痛い　痛い　痛い　痛い
　　　だけど、生きてない　視界がない　なにもいない　誰もいない
　　　生きているのに
　　　誰
　　　死体にしたならお願いします　抱きしめて　捨てて


　血で、書かれていた。
　カヲリが、にこりと笑った。目が、笑ってなかった。

　俺たちは、コンビニにおでんを買いに出かけた。</description>
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         <pubDate>Mon, 14 May 2007 14:56:25 +0900</pubDate>
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            <item>
         <title>Ｋの力</title>
         <description>　僕が住むＫ市の南半分は、奴らに支配されていた。
　具体的にいうと、市の中央を東から西へ横断するＪＲ中央線を境に、南部だけが奴らのものになっているのだ。市役所、警察署、品揃えのいいゲーム屋、それに加えて、美味しいカレーの店までもが、奴らの手に渡っている。
　残された北側に、僕は住んでいた。
　市の北側には、総合病院とか、広い公園とか、ラーメン屋通りとか、パチンコ屋がある。臨時の市役所は、駅前の大型スーパー、Ｋ’ｓマートの中に入れられた。
　中央線の線路の向こうは、厳重に封鎖されていた。
　物々しい自衛隊の仮設本部が設置され、装甲車とか、戦車とか、妙な特殊車両なんかが配備されている。奴らの侵攻を抑えるための軍備には、アメリカの介入もあった。甲殻歩兵という兵装がそうだ。通称”Ｋ兵”と呼ばれているそれは、真っ黒な防弾甲冑を着込んだ、装甲兵だ。動力が組み込まれていて、通常の人間の数倍の力を出すことができるらしい。
　奴らがＫ市の南半分を侵略してから、もう半年が経つ。
　こんな状況なのに、今のところ、生活は平穏だ。不思議に思えるくらい普通だ。中央線も走っている。市の北側にある学校だって、休みにはなっていない。
　それは、僕らのお蔭なのだ。

　僕はいつものように、遅刻ギリギリの時間に起床する。
　憂鬱な気分だった。目覚ましの音が、恨めしい。
　重いドアを開け、居間を覗くと、テレビがついていた。朝のニュースだ。Ｋ市の南の映像を流し、訳知り顔のコメンテイターや、なんとか評論家たちが、適当なことをほざいている。
　お父さんが、テレビを見ながら、「いい気なもんだよな」といった。台所のお母さんは、「いい気なもんよね」といった。彼らの顔は、どこか得意げだ。
　低血圧のお姉ちゃんは、テーブルに肘をついて、涎を流しながらぼけーっとテレビを眺めていた。もう大学生だというのに、だらしない。僕は苦笑して、ティッシュでお姉ちゃんの涎を拭いてあげた。　
　すると、お姉ちゃんは椅子ごと背後にひっくり返り、白目を剥き、泡を吹いて痙攣し始めた。
　お父さんとお母さんは、僕が居間に現れたことを知ると、バタバタと暴れ出し、揃って窓辺に張り付いた。
「おはよう」と、お母さんが震える声でいう。
「おはよう」と、僕はお姉ちゃんの酷い顔を見ながら答える。
　僕はため息を呑み込むと、脅えた両親を一瞥して、自分の部屋に戻ろうとした。
「早起きだな。お前、今日は学校じゃないんだぞ」と、お父さんが威厳を込めて、でも裏返った声で、そういった。
「もう行くよ」僕は背中を向けたまま、そう答えた。
　自分のスケジュールくらい、把握している。子どもじゃないんだ。僕は自分の部屋の重いドアを閉めると、高校の制服じゃなくて、普段着に着替え始める。黒いジーンズに、紺のパーカー。どうせあとで着替えるんだから、適当でいい。
　密閉マスクを装着する。口元にぴたっと張り付くタイプのマスクで、これをしないで外に出ると、大変なことになってしまう。
　嫌な世の中になったな、と思う。
　僕は、なにもいわずに家を出た。
　駅前は、出勤するサラリーマンや学生で、混雑していた。ホームから聞こえてくるアナウンスに耳を傾けると、今日も人身事故で遅れているみたいだ。
　みんなは今日も、普段とたいして変わらない毎日を送っている。奴らのせいで大きく変わったのは、僕の人生の方だ。
　遮断機の前に立つマスクを着けた警備兵に声をかけ、線路を渡る。自衛隊の仮設本部は、粗末なプレハブだった。ＪＲの工事用の敷地の中に、でんと構えている。その先は、厚い壁。奴らの攻撃を防ぐその壁は、百ミリの鉄板だという話だ。
「おはようございます」
　やる気のない声でそういって、僕はプレハブの中に入った。
「グッモーニン。遅刻ギリギリだぞー」
　眠そうな顔で出迎えてくれたのは、カレラさんだ。彼女は、ハーフだ。肩まで伸ばした髪の色がブロンドで、コピー用紙みたいな白い肌をしているが、瞳の色は黒い。歳は僕の１コ上。高校は違うけど、中学までは一緒だった。
「あれ。カレラさんひとりっすか」
「うん。つか、克己くん、寝癖酷いぞ」
　彼女はいつも、苗字じゃなくて名前の方で僕を呼ぶので、なんだかくすぐったい。ソプラノの素敵な声で呼ばれると身悶えしちゃうくらいなんだけど、今はマスクを装着しているから、くぐもった声だ。
　僕はびよんと跳ねた髪を撫でながら、彼女のそばのパイプ椅子に座ると、なんの気なしに壁に並べられたモニタを眺める。いつ見ても、なにが表示されているかよくわからない。わかるのは、時間と気温くらいだ。
　部屋は狭いのに、マスクを着けた自衛隊のひとたちは、忙しげに働いている。緊張した顔で、動き回っている。キーボードを叩く音は、途絶えることがない。
　完全に、僕は浮いていた。ここは、普通の高校生男子が、普段着でいる場所ではない。キャミソールにミニスカートというカレラさんも、当然浮いている。ノーブラなのか、ぽっちも浮いている。
「カレラさん。なんか変化ありました？」僕は視線をさまよわせながら、そういった。
「変化なんかないわよ。暇。すっげ暇。夜はめったに攻撃してこないもん。つか、克己くんがうらやましいよ。今日って、特攻でしょ。楽しそー」
「……じゃあ代わってくださいよ」
「ノー。絶対にノー。わたしは、あんたみたいに強い”Ｋ”じゃないもん」カレラさんは、皮肉めいた笑みを浮かべる。「特攻するなら、あなたくらい強くなくちゃ」
「カレラさんだって、強いっすよ。選ばれたんだし」僕は、むっとした。「夜番ひとりで任されてるのだって、認められてるからっすよ」
「あーらご謙遜。世界を背負うほどの”Ｋ”にそういわれると、嬉しいわー」
「僕は、そんなに強くない」
「なによ、世界最強の”Ｋ”のくせに。”Ｋ”の強さって、本人はなかなか気づかないのよねー」
「カレラさんだって、そうだったんでしょ。最後まで否定してた」
「うるさいわね。あんたは前から有名だったわよ」カレラさんの顔が、けわしくなった。
「カレラさんこそ」僕はわざとらしく肩をすくめて、哀れるような目で彼女を見た。「有名でしたよ」
「な、なによー、その目。年下のくせにー」
　カレラさんは、攻撃を始めた。何故かわからないけど、彼女は怒るとやたらとひとの服を脱がそうとする。
「やめてくださいよ。エッチ」僕は椅子を盾にして、逃げ回る。「そんなんだから、彼氏ができないんすよ」
「あんたにいわれたくない」カレラさんは、胸を揺らしながら椅子を蹴り倒す。「あんただって、フラれてばっかじゃん。知ってんだかんね」
「う、うるさい。僕だって、”Ｋ”がなかったら」僕は、彼女の腕力の前に劣勢だった。抵抗しても無駄で、パーカーを奪われてしまう。「うわっ。や、やめてくださいってば」
「なによそのおなか。ダイエットしたら」カレラさんの攻撃は、執拗だった。ついに、僕のジーンズを下ろそうと襲いかかってきた。「さっきわたしの胸見てたでしょ。硬くしてたら、折ってやるわ」
「や、やめて。お願いだからやめてやめて」僕は叫んで、狭い部屋の中を逃げ回る。
　これだけ暴れまわって騒いでいるのに、周りの軍人たちは、僕らを叱ろうとしない。脅えのこもった目で、ただ遠くから眺めるだけだ。
　カレラさんの手が、いよいよ僕のパンツにかかったとき、部屋の空気が変わった。とても日本人とは思えないくらいがたいのいい男性が、入ってきたのだ。坊主頭の上に軍帽を乗せた彼は、やたらと眉毛が太く、その下の目はナイフのように鋭い。僕らと同じようにマスクを着けているけど、立派な髭が飛び出していた。
「おはようございます、鹿島一等陸尉」
　僕は慌てて真面目な顔を取り戻すと、しゃきっと背筋を伸ばした。しかし、カレラさんは問答無用で僕のパンツを下げた。僕のものがこぼれた。僕は悲鳴をあげた。
「うむ。グレートだ」鹿島一等陸尉は、うっすらと頬を染めて、そういった。
　カレラさんは顔をこわばらせ、さっと僕のパンツを戻した。勢いがつきすぎて、思いっ切り食い込んだ。僕は悲鳴をあげた。
「うむ。デリーシャスだ」鹿島一等陸尉は、うっとりとした顔で、満足げに頷きながら、そういった。
　僕はカレラさんの脳天に、拳骨を振り下ろした。カレラさんはパンツを丸出しにして倒れ、気を失った。
「はしたない。目が腐る。外へ捨てろ」鹿島一等陸尉は目を背け、不機嫌そうな声でそういった。
　僕は、急いでジーンズをはいた。知らないでいい世界を、かいま見たような気がした。
　カレラさんは、本当に外に捨てられていた。

　この場の総責任者である鹿島一等陸尉とともに、僕は別のプレハブに移動する。口にマスクをしっかりと装着した偉そうな軍人たちが、目元にいやらしい笑みを浮かべながら迎えてくれた。僕は、目を逸らす。僕やカレラさんを利用しているだけなのに、いつもふんぞり返っているこのひとたちが、とても嫌いだ。軍人の中で唯一気に入っていたのは、責任感と威厳の塊のくせに、妙に優しいところのある鹿島一等陸尉だったんだけど、さっきの様子を見ていたら、近寄るのが怖くなってきた。
　ミーティングが始まった。鹿島一等陸尉が中心になって、今日行う作戦の詳細をみんなに説明する。だけど、ごく普通の高校生である僕に理解できることじゃない。専門用語が多いし、暗号めいた言葉も多い。しかもみんなマスクをしているので、声がもごもごしている。聞いているだけで、眠くなってくる。
「入ってこい」と、鹿島一等陸尉が外に向かって叫んだ。
　彼の大きな声に、うとうととしていた僕は、我に返った。
　ガチャガチャと真っ黒な防弾甲冑を鳴らしながら、”Ｋ兵”が数名、部屋の中に入ってきた。銃身が長くてごついライフルを、軽々しく抱えている。いつもながらカッコイイな、と僕は思う。
　次に入ってきたのは、”Ｋ動隊”。つまり機動隊だ。その次は”Ｋ察官”。つまり警察官。Ｋ作員”こと工作員も入ってくる。”Ｋ備員”も入ってきた。トランクスにグローブを着けた”Ｋ－１”戦士は、そのまんまだ。空手着の”Ｋ手家”も入ってきた。電卓片手に”Ｋ計士”もきた。烏帽子をかぶり袴をはいた”Ｋ主”や、”Ｋ’ｓマートの社員”まで入ってきた。プレハブの中は、ぎっしりである。
「”Ｋ”が、奴らを滅ぼす」鹿島一等陸尉は、重々しい声でそういって、僕の肩を撫でるように叩いた。「”Ｋ”の存在を、奴らに知られてはならぬ」
　その場にいた全員が、声を揃えて「把握」と返事した。
「これより、特攻を開始する。”Ｋ”を守り、”Ｋ”を突入させるのだ」
「え。もうっすか」僕は驚きの声をあげた。まだ心の準備ができていない。
「奴らは待ってくれん。動き出している。隣の部屋で、準備を急げ」
　鹿島一等陸尉に優しく背中を押されたので、僕は逃げるように隣の部屋に行く。お尻がむずむずした。
　そこは、食堂だった。テーブルの上に並べられているのは、ギットギトのトンカツ、にんにく臭いステーキ、辛そうなキムチ鍋、チーズたっぷりのピザ、コロッケ、春巻き、フライドポテト、メンチカツ、唐揚げ、炒飯、チョコパフェ、濃いコーヒーとコーラ。朝飯を抜いてきてるから、おなかが空いているのは確かだけど、眺めているだけでも胸焼けがする。
「量、多くないっすか」
「これくらい喰わないでどうする。噛まずに呑め。時間がない」うぷっといいながら、鹿島一等陸尉は部屋から出て行った。
　仕方がないので、僕は椅子に腰掛け、マスクを外すと、食事を始める。カレラさんも、これくらい食べているはずだ。彼女はいくら食べても太らない体質だからいいけど、僕は違う。最近、顎がたぷたぷしてきた。体重計に乗るのが怖い。
　食事は、十五分で終えた。我ながら、あれだけの量を平らげられるのは凄いな、と思う。
　げっぷをしながら、隣の個室に入る。無菌室みたいな狭い部屋で、僕は用意された服を手に取る。最新鋭の、光学迷彩服。通称”Ｋ服”。スイッチを入れると、辺りの風景を取り込んで映し、姿を見えなくする服だ。ぴっちりと身体に張り付くので、ちょっと気持ち悪い。
　着替えながら、なんでこんなことになったんだろうと、僕は思う。奴らがこなかったら、もっと平和に暮らせたんじゃないだろうか。
　いや、違うな。僕のこの力は、いつか僕を滅ぼしていただろう。
　自虐的に苦笑して、顔を覆うマスクまできっちりと装着すると、別のドアから外に出る。
　そこには、”Ｋ”の名を持つ兵たちがずらりと並んでいた。みんな厚いマスクをぴったりと着け、羨望のまなざしで僕を見ている。
「期待しておるぞ」
　鹿島一等陸尉が現れて、僕にそういった。彼の舐めるような視線には、気づかないふりをした。
「出撃」誰かが、叫んだ。
　躊躇している暇さえ与えてくれない。僕を囲むように、”Ｋ兵”が並ぶ。僕は、”Ｋ服”のスイッチを押した。自分ではよくわからないけど、これで姿を消せているはずだ。
　厚い壁のゲートが開き、僕たちは行進を始めた。

　Ｋ市の南側は、寂しげな感じだった。商店街はほとんど壊されてなくて、呑み屋もうなぎ屋も薬局も、時間を止めたようにひっそりとしている。当然、ひと気はない。
　特攻はもう何度も経験しているけど、やはり緊張する。僕だけは、殺されることはないだろう。みんなが守ってくれるし、引き際さえ間違えなければ、大丈夫だ。だけど、運が悪ければ死ぬこともある。そう考えると、胃が痛くなる。冷や汗が流れる。
　僕を守るひとたちは、かなり危険だ。彼らの死傷率は、とても高い。国を守るためとはいえ、よく志願するものだな、と感心する。僕を国に売ったお金でのうのうと暮らしているうちの両親とは、比べ物にならないくらい偉いと思う。
「発見」先頭を歩いていた”Ｋ備員”が、叫んだ。
　さっと緊張が走る。
　奴らが、遠くの建物の影から姿を現したようだ。
　誰かが命令し、”Ｋ”の名を持つ兵たちは散開しながら銃を撃ちまくった。ただの威嚇だ。銃は、奴らに効果がない。アメリカは核を落としたが、奴らは分裂して数を増やした。ＢＣ兵器を含め、近代兵器はまったく効果がないのがわかっている。
　ただひとつ、効果があるもの。
　それが、僕やカレラさんが持つ、”Ｋ”の力だ。
　Ｋ市の南にあるＦ市にも、”Ｋ”の力を持つひとたちがいる。西のＭ市や、東のＯ市もそうだ。奴らは、”Ｋ”の力に囲まれている。協力すれば、いつでも奴らを滅ぼせると思うのだけど、何故かそうはしない。大人の事情があるらしいのだが、僕には理解できない。
　もっとも、奴らがいなくなって一番困るのは、僕たちかも知れない。この力は、奴らのためにある。奴らががいるからこそ、絶望せずにいられる。僕は、自嘲の笑みを浮かべた。
「正面から、まいりました。あれぞ、ヤケクソアタックでございます」
　烏帽子をかぶった”Ｋ主”が寄ってきて、落ち着いた低い声で僕につぶやくと、逃げた。
　奴らが、街道の向こうから突撃してくるのが見える。数は、三体。
　それは、巨大な鼻だった。
　体調五メートル近くある、鼻。
　鼻に、複数の腕と、四本の太い脚がついている。顔は、ない。これが、奴らだ。どこからともなく沸いて出た、侵略者。アメリカを壊滅させ、日本に上陸した殺戮者。
　ちなみに、「奴」という字が奴らの姿にそっくりなので、「奴」と呼ばれている。
　大きな鼻の穴の中で、太い触手のような鼻毛をぶらんぶらん揺らしながら、奴らはどたどたと走ってくる。鼻くそがついているのが見えて、凄く不快だ。
　盾を構えて並んだ”Ｋ動隊”が奴らの足に踏み潰され、”Ｋ’ｓマートの社員”が呼び込みを始め、”Ｋ手家”と”Ｋ－１”ファイターが奴らの鼻息に吹き飛ばされ、”Ｋ察官”が速度違反の切符を切り、”Ｋ兵”がライフルを撃ちまくり、”Ｋ計士”が被害総額を弾く中、僕はギリギリまで我慢する。
　その距離十メートル。
　僕は、マスクを外した。
　すうっと息を吸い込む。そばにいた”Ｋ兵”たちは、素早く僕の後ろに退避する。
　奴らが犯した最大の間違いは、日本の、Ｋ市に現れたこと。
　Ｋ市には、僕がいた。
　喰らえ、と、僕は心の中で叫ぶ。
　はー。
　胃の中の空気を搾り出すように、僕は息を吐いた。
　奴らは、瞬時に死んだ。
　もんどりうって倒れ、そのまま溶ける。
　奴らの弱点は、これなのだ。奴らに唯一効果がある攻撃は、これだけなのだ。
”Ｋ”。その正式な名称は、”Ｋｏｕｓｙｕｕ”。
　つまり、口臭。
　僕の口臭は、世界で一番強いらしい。しかし、僕の最大口臭が持続するのは、約一時間。通常時の口臭では、人間の気を失わすことはできても、奴らは殺せない。
「嬉しくない」
　僕は、口臭を撒き散らしながら、泣きたくなるのを我慢した。</description>
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                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">ヒーロー</category>
        
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                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">ライトノベル</category>
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         <pubDate>Tue, 08 May 2007 14:36:47 +0900</pubDate>
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         <title>脇の下のビームで</title>
         <description>　あたしは、脇の下からビームが出せる。
　特別、変わったことじゃないと、あたしは思っている。あたしはオタクである。腐女子である。マンガやアニメ、ゲームにライトノベルと、さまざまなジャンルの作品に触れてきた。その中には、脇の下からビームを出せる女子高生なんて、ざらにいる。今のところ、そんな女子高生が出てきた話なんて読んだことはないが、きっといる。いるはずだ。いて欲しい。
　あたしは、変じゃない。
　でも、そう思い込もうとするのには、限界がある。
　繁華街の暗く湿った裏路地で、あたしは男を見下ろしている。
　気を失った男は、顔面に酷い火傷の跡を作り、金髪をくすぶらせながら倒れている。
　あたしが、やったのだ。
　あたしが、この柄の悪そうな金髪頭の不良を、退治したのだ。
　脇の下から出るビームで。
　この男は、悪人だ。気が弱そうで華奢で貧弱な女子高生であるあたしをみつけると、ニヤニヤ笑いながら肩を抱き、強引に裏路地に連れ込んだ。ひと気がないのを確認すると、ぷるぷる震えるあたしの頬を撫で、舌なめずりをして、胸を鷲掴みにした。だから、こらしめた。
　脇の下のビームで。
　いいことをした、と思う。悪人をやっつけたのだ、と思う。
　だけど、自己嫌悪。
　ここまでやることはなかったんじゃないか、と思う。顔面を火傷したこの男の未来を思うと、罪悪感が沸く。眼球は焼け爛れており、鼻梁もなくなっている。親が見ても、すぐには誰だかわからないだろう。
　脇の下のビームは、融通がきかない。あたしの感情が、モロに反映される。嫌悪感が、威力に変換され、セーラー服の脇を破り、射出される。 まだ未熟なのだ。
　まあいいや。ビームでやられることなんて、よくあることだ。
　あたしは、その場から逃げるように、走り去る。
　裏路地から出ると、あたしは素知らぬ顔をして、繁華街の通りを歩く。午後の繁華街は、ひと通りが多い。雑踏にまぎれ、あたしは駅へ向かう。あたしは変じゃない。あたしは悪くない。ビームなんてありふれている。そう、頭の中で繰り返しながら。
　もうじき、駅前に出る。電車に乗って、二十分。そこから自転車で十分走れば、家に着く。それまでの間、脇をしっかり閉め、穴が開いていることを誰にも悟られないようにしなくちゃいけない。セーラー服の脇に穴を開けた女子高生なんて、恥ずかしすぎる。 あたしは、ひと一倍、恥ずかしがり屋さんなのだ。ついでに、ひと見知りも激しい。
「君。待ちたまえ」
　突然、ぐいっと、肩を掴まれた。
　あたしはびっくりして、脇の下に熱い衝動が訪れるのを覚えた。 ぐっと我慢して、振り返る。
　若い男が立っていた。
　背が高く、がっちりした体系の男だ。黒い趣味のいいスーツを着ている。精悍そうな顔つきで、こけた頬にはまばらな髭が生えている。
　彼は、眉根を寄せていた。瞳には、困惑の色が見て取れる。
「君が出てきた裏路地に、火傷をした男が転がっていた。あれは、君が？」
　少し、ビームが出た。
　両手を脇に突っ込んでいなかったら、地面を焼いていただろう。あたしのビームは、何故かあたし自身には効果がない。
「知りま、せん。……なんの、ことですか？」
　あたしは、うつむいた。自分の声が震えているのがわかる。
「知らない、ってことはないだろう。君が出てきた路地だ。なにを見たんだい？　誰がいたんだい？　教えてくれないかな」
　男は声を潜めると、顔を近づけてきた。鼻を突くコロンの匂いに、あたしは顔をしかめる。
「……お、大声出しますよ？」
　一歩後ずさりながら、あたしは精一杯の声でそういった。 蚊の鳴くような声とは、きっとあたしみたいな声をいうのだろう。これでも、頑張った方なのだ。さっきの金髪の不良相手には、 悲鳴ひとつあげられなかった。
「いや、本当に見てないのかい？　まいったな、やっと手がかりが掴めたと思ったのに。妖怪ビーム人間……いや、なんでもない。気にしないでくれ」
　男は苦笑すると、スーツの胸から名刺を取り出して、あたしに差し出した。
　あたしはゲップを押しとどめるみたいにぐっと我慢して、脇から手を離すと、名刺を受け取った。
　名刺には、
『私立探偵　高麗川太郎』
　と、印刷されていた。
「俺は、こういう者だ。怪しい者じゃない。驚かせて、済まなかったな」
「……探偵さん、ですか？」
「そうなんだ。この辺りで頻発している、ある事件について調べている。連続火傷事件、とでもいえばいいかな。君も聞いたことがあるんじゃないか？　顔に酷い火傷を負わされる事件。模倣犯のようなものかな。被害者は、柄の悪い若者が多いんだが」
「はぁ……」
「知らない、か。でも、なんか思い出したことがあったら、そこに書いてある電話番号に連絡してくれ。なんでもいいんだ。情報を集めている。報酬も出すよ。じゃ、よろしくね」
　男はそういい残して、去っていった。
　あたしは、男の背中をぼんやりと見送る。彼は、もう一度被害者を確認しようと思ったのか、さっきあたしが出てきた裏路地に、躊躇なく入っていった。
　あたしは、ふーっと息を吐き出した。
　そして、すぐにむっとした。
　あたしは、妖怪なんかじゃない。妖怪ビーム人間だなんて、酷い。
　あたしは腐女子なので、「はやく人間になりた～い」というフレーズが、当然のように頭の中に浮かんできた。あのジャズ調の主題歌が、頭の中で鳴り始める。
　冗談じゃない。闇にまぎれて生きてなんかない。あたしは、妖怪でもミュータントでもホムンクルスでもないのだ。十代の突然変異忍者亀でもない。普通の女子高生だ。ちょっとだけ、脇の下からビームが出せるだけだ。
　憤慨しながら、あたしは駅に向かう。あんな失礼な男、もう二度と会いたくない。名刺は、その場で破り捨てた。
　大型スーパーや銀行などが立ち並ぶ、駅前のロータリーは、ざわついていた。
　寄り集まったひとびとは、みな興奮気味で、なにかについて熱く語り合っているようだ。よく見れば、あたしと同じ学校の制服を着た学生も、ちらほら見える。
　なにごとかと思って、あたしは耳をそばだてる。
　そのとき、
「おい、あれを見ろ！　空だ！」
　と、誰かが叫んだ。
　みんな、見事なくらい一斉に、空を見上げた。
　あたしも、空を見上げる。
　蒼く澄んだ空に、ひとの姿があった。
　そのひとは、空を飛んでいた。背の低い雑居ビルの間を、器用に飛び抜ける。
　尻から、虹色に輝くビームを出しながら。
「おお！　ビームマンだ！」
「キャー！　ビームマンよ～！」
「さっき、銀行強盗を倒したんだぜ！　オレは見てたぜ！　必殺の尻ビーム乱れ撃ちで、一網打尽だったぜ！」
「ビームマン！　ビームマン！」
「すっげえ！　ビームで飛んでるぜ！」
「写メ！　写メ撮らなくちゃ！」
「いつも思うんだが、彼は痔にはならんのかね？」
　騒ぎの中、あたしだけが背を向ける。 あたしの顔は、まっかっかだ。
　尻の穴からビームを出し、空を飛ぶ、正義のヒーロー。
　彼は、あたしのパパだった。
　ちなみにあたしのママは、乳首からビームを出せる。兄は、股間から。
　そう。ビームを出せるなんて、普通のことなのだ。
　我が家にとっては。
　あたしはため息をつきながら、改札を通った。</description>
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                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">特殊能力</category>
        
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         <pubDate>Fri, 27 Apr 2007 11:10:11 +0900</pubDate>
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         <title>鼻毛出てるよ</title>
         <description>「鼻毛出てるよ」
　高崎さんが、そういった。
　オレは、彼女がなにを口走ったのか、すぐには理解できなかった。
　鼻毛。
　彼女の口から出た言葉は、オレの耳が確かなら、鼻毛。
　顔を上げると、高崎さんの視線が向かう場所は、オレの顔面のほぼ中央近辺だった。
　机を挟んだ向かい側に、彼女は座っている。距離にして、一メートルもない。確かに、オレの鼻毛を鑑賞するには、絶好の間合いだ。
　オレの鼻から、鼻毛が出ている。　
　否。そんな馬鹿な。このオレが、鼻毛が鼻から出ていることに気づかないまま、授業を終え、このマンガ・イラスト研究部の部室に足を運び、先にきていた高崎さんを相手に、昨日徹夜で考えたロボットものの設定を、意気揚々と話していたというのか。机に広げたノートに、同じく昨日考えたロボットの絵を描きながら、興奮気味に話していたというのか。
　ありえない。嘘だ。
　オレは、そう結論付けた。
　いや、まてよ。
　即刻、オレはオレ自身に反論する。
　高崎さんは、嘘をつくような女子じゃない。彼女が嘘をついたという話なんか、聞いたことがない。
　そうだ。彼女はちょっと天然なところがあり、普通口に出さなくていいようなことを、あっけらかんということがあるのを、オレは思い出した。
　ということは、やはり。
　オレは瞬間的に青ざめ、息を呑んだ。
　なぜなら、オレは高崎さんのことが、気に入っていたのだ。いや、自分をごまかしても詮方ない。はっきりいおう。オレは高崎さんのことが好きなのだ。
　ぶっちゃけ、彼女はそんなに可愛い方ではない。上の下というか中の上。若干釣りあがり気味の目は一重だし、胸の膨らみもワイシャツごときに潰されるくらいの平らさだ。他の同級生と比べても、見掛けは劣る。 成績だって、そんなにいい方じゃない。全教科赤点ラインギリギリの低空飛行を得意とするオレよりは、遥かにマシだが。
　彼女の魅力は、声だ。上ずった鼻声みたいな彼女の声は、アニメの声優のようで、凄くいい。一人称を「ボク」とかいわせてみたい衝動に駆られる程だ。
　あと、おでこが広いのもジャストミートである。幼児体系なのも、実は好みの範疇だ。こうして机ごしに対面しているだけで、オレのハートはドッキンドッキンと激しいビートを刻んでいた。
　それなのに、だ。
　鼻毛が出ているだと。
　微笑を浮かべながら、オレの話を真面目に聞いていたのかと思ったら、鼻毛を凝視していただと。 興味深そうに身を乗り出していたのは、オレの鼻毛がそよぐのを、観察するためか。
　信じられない。本当なのだろうか。
　本当だとしたら、とてつもなく最上級に恥ずかしいことだ。
　しかし、本当である確率はほぼ百パーセントだ。何故なら、高崎さんは嘘つきじゃない。
　ここまで、オレは約０．二秒で考えた。
　高崎さんの顔は、「鼻毛が出てるよ」と口にした時点から、変化がない。
　オレは、更に思考する。
　この部室にいるのは、オレと高崎さんだけだ。マンガ・イラスト研究部の部員は、幽霊部員が多い。毎日顔を出すのは、オレと彼女と、今は補習を受けている部長くらいなもんだ。
　ふたりだけの部室。
　ふたりだけの空間。
　それなのに、鼻毛。
　いつも部長のことを邪魔だなと思っていたのだが、まさか鼻毛にまで邪魔をされるとは。
　鼻毛、なんという残虐な響きだ。
　間抜けさと、情けなさと、無様さが混じる、絶妙な存在。 生物学上必要なものかも知れないが、なくても構わない、いやむしろない方がいいとさえ思える物体。
　この鼻に鼻毛があるということを、オレは恨む。オレの鼻に鼻毛を植えつけた親を、いや、神を恨む。 好きな女の子の前で迂闊にも飛び出すなど、言語道断だ。
　悲観していても仕方がない。オレは、どうすればいいか、考える。 最良の方策を、考える。
「えーまじー鼻毛出てたーあははー」などといいながら、ぷちっと抜くか。しかし、鼻毛を抜くシーンなんか見られたくない。それに、抜いた鼻毛はどうすればいいのか。まさか、ぽいっとその辺に捨てるわけにもいくまい。ゴミ箱は、部室の隅だ。そこまで歩いていき、ぽいっと捨ててうわああ……。
　だめだ。耐えられない。ゴミ箱に行くまでの間、オレの背中を彼女はどんな目で眺めるのか、想像もしたくない。 想像したら最後、間違いなく気を失うだろう。
　ではどうするか。
「ファッションなんだよーえへへー」って、アホか。
「鼻毛で三つ編みって結えるかな？」って、結えるわけがない。
「鼻毛真拳～」って、ボーボボか。
　いいアイディアが出ない。
　まずい。なにも思いつかない。
　ここまで、オレは約０．四秒で考えた。
　高崎さんは、まだ瞬き一回としていない。
　しかし、そろそろ一秒が経過する。高崎さんが、次のアクションを起こすかも知れない。今は微笑を浮かべているが、それが嫌悪の顔に変わるかも知れない。
　窮地だ。
　追い詰められた。
　オレは自分の無力さを呪った。こんなことになるくらいなら、毎日鼻毛チェックをかかさず行えばよかった。鼻毛カッターを買えばよかった。ああ、自分が恨めしい。
「ちょっと待ってね」
　ついに、高崎さんが動いた。
　オレの思考は、鈍くなっていたようだ。
　そうと気づき、愕然とした。
　どれくらいの間、オレは固まっていたのだろう。どれくらいの間、鼻毛を凝視されていたのだろう。 オレの心臓は、さっきまでとは違った、乱れに乱れた困窮のビートを刻む。
　高崎さんは、わきに置いた鞄を膝の上に乗せ、なにやら物色し始めた。
　そこから、なにを取り出すというのか。
　緊張のあまり、耳鳴りがする。オレは、唾を呑み込んだ。
「あった。いいかな？」
　オレの大好きな、高崎さんの声。
　キラリと、彼女の手の中で、なにかが光った。
　銀色の輝き。
　高崎さんの持つそれが、オレに近づく。オレの鼻に向かって、どんどん近づく。
　なんだ。これはなんなのだ。オレは困惑する。なにが自分の身に起ころうとしているのか、認識できない。それくいらい、オレはパニクっていた。
　パチン。
「はい。切れましたー」
　はらりと、ノートの上に鼻毛が落ちた。
　意外に太い、毛。
　その刹那、オレは理解した。
　高崎さんが、ハサミでオレの飛び出た鼻毛を切ってくれたのだ。
「あ、ありがとう」
　オレは引きつりまくった顔で、呻くように、そういった。
　高崎さんは、可愛らしく首を傾げると、アニメの声優のような声で、
「エヘ」
　なんていった。
　その仕草により、オレの緊張は解除された、というか爆砕された。
　可愛い。むっちゃ可愛い。彼女が至上の天使に見える。こんなに可愛い高崎さんが、オレの飛び出た鼻毛を、私物のハサミを使って切ってくれるだなんて、信じられない。素晴らしい。なんていい娘なんだ、高崎さん。彼女の優しさと壮絶なまでの献身っぷりに、オレは惚れた。あらためて、惚れ直した。高崎さんは、素敵だ。素晴らしい女の子だ。こんなにいい女子なんて、世界中探してもいないに違いない。 宇宙規模で好き好き大好き。
　オレは、意を決した。
　ガタンと椅子を弾き飛ばしながら、鼻息荒く、オレは立ち上がる。
「高崎さん！　オレと付き合ってくれ！」
　オレがこの一年間胸に秘めていた熱い想いを吐き出すと、高崎さんは驚く素振りすら見せず、ハサミを持ったまま、笑顔を絶やすことなく、こう答えた。
「鼻毛、また飛び出してきたね。おもしろーい」
　オレは、死のうと思った。</description>
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         <pubDate>Thu, 26 Apr 2007 15:26:00 +0900</pubDate>
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         <title>自由帳</title>
         <description>　どうも、おはこんばんちわ。
　星野弧絵です。
　ローマ字で書くとHoshino Koeです。
　ライトノベルを書いています。
　ライトノベルを書いていきます。
　頑張りますのでよろしくお願いしますです。

　というわけで、ここは自由帳です。
　なんか自由になってます。
　ご意見ご感想ご質問ご提案ご苦情ご非難等ありましたら、遠慮なくコメントして欲しいです。

Update 2007.05.09　星野弧絵</description>
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                  <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">（自由帳）</category>
        
        
         <pubDate>Thu, 26 Apr 2007 00:00:00 +0900</pubDate>
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