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少女のうつろな表情

2008年6月6日 金曜日
この記事の所要時間: 約 1分56秒

「パンズ・ラビリンス」を観ました。嫁が借りたレンタルDVDで。
 スペイン映画でした。なんかいろんな賞を取ってるみたいなんですが、まったく知らなかった。
 1944年の内戦が続くスペイン。主人公の少女は、母の再婚相手である大尉のもとへやってくる。そこはゲリラの潜む山奥で、戦場。野営地のそばには、神秘的な迷宮の遺跡があった。少女は妖精にに誘われて、迷宮の中へ向かう。



 少女は半身半獣のパンと出会い、いくつかの試練をクリアして、ついに魔法の王国へ王女として迎え入れられます。
 しかし、この映画は、いろんな解釈ができると思うんですよ。
 こう思いました。
 冒頭のシーン、少女のうつろな表情が確証です。
 残虐でプライドの高い大尉も、夢見がちでかよわい少女も、実は同じ。
 ふたりとも、実は悪役だった。
 このコントラストがすごい。対比がものすごく巧い。
 少女の方を、ファンタジックに、温かい目で、優しく描写し、大尉の方をとことん悪逆非道に描いてますけど、結局は同じ。
 思いやりがない。現実を直視していない。自分だけの幸せを考えている。自分の都合の良い世界を夢見ている。自分だけの世界に生きている。
 最後、生まれたばかりの赤ん坊をこのふたりは取り合います。これも、少女の方は慈愛に満ちたように描き、大尉の方は自分の欲望を満たすように描いてますが、自分のために利用しようとしたことは同じ。
 だから、このふたりは死ぬ。
 現実に引き戻される。無慈悲で救いようのない報いを受ける。
 助かるのは、現実から目を背けず一生懸命生きている、ゲリラのオバサン。敵を欺くことにも躊躇するようなとても優しい心を持ち、思いやりのある彼女は、死ぬことはなかった。

 つかまあ、非常に酷い話です。確かにダークファンタジーです。迷宮のように捻くれてます。監督の悪意を感じます。
 けれど、こういうの大好き。
 絶対に選んでなかった映画だっただけに、嫁に感謝です。嫁は「ローズ・イン・タイドランド」のときと同様、とても残念な顔してましたが。
 R-12だけあって、残酷描写は痛々しかったです。口をナイフで裂かれたりとか。あと、不気味レベルが高くて強烈な魔物がいました。あの目玉取り外し式のデザインは秀逸です。
 すごい面白かったです。観てよかった。

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