この記事の所要時間: 約 18分52秒
これは、とあるカードゲーマーの家にある12個のデッキから生まれた物語である。
もちろん、オールフィクションであり、脳内妄想であり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありませんし、精神に異常をきたしてもいません。
もちろん、オールフィクションであり、脳内妄想であり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありませんし、精神に異常をきたしてもいません。
Chapter 2:戦慄のファーストアタック
なんだこの入場曲は。
入場ゲートから決闘場までまっすぐに延びる赤い絨毯の上を歩きながら、禿野道房は憤然としていた。
なぜ演歌。なぜ吉幾三。年齢で選曲してんのか。41歳だともう演歌なのか。客席からの笑い声は最初だけで、ブーイングすごいぞ。ふざけんな。ウケ狙いだと思われるじゃないか。選らんでないっつーの。こちとら音楽の趣味は若いっつーの。キャリーぱみゅぱみゅ好きだっつーの。恥ずかしげもなく乳毛晒せるっつーの。
しかしいくら憤ろうとも、緊張は隠せない。心配だ。それにまさかの第1試合。6万の注目。6万の期待。6万の熱い視線。その重圧が、道房を押しつぶそうとしていた。
やばい。これまじやばい。冷や汗が止まらない。目眩がする。脚が震える。足が重い。トイレには行ってきたけど、腸がうなり声を上げている。虎がうなってる。
「……! ……くーん!」
大歓声にかき消されつつある声に、道房ははっとした。
この声は。客席を探す。いた。藻衣だ。現役女子高生カードゲーマーであり道房の姪である藻衣が、柵で覆われた客席の一番前まで出てきて大きく手を振っている。
道房は駆け寄った。
「藻衣! 無事か! 友吾に変なことされなかったか!」
「大丈夫! されるまえに通報したよ! 今はもうパトカーの中!」
「そうか!」道房はほっと胸をなで下ろした。「……ありがとう、藻衣。これで心配事はなくなった!」
「うん! 頑張ってね、道房くん!」
「おうよ!」
吹っ切れた道房は、さっきまでとは大違いな足取りで、決闘場へ向かう。親友でありロリコンである友吾に、藻衣を任せたのは失敗だった。そのことをずっと悔いていた。だがしかし、藻衣は思ったよりも大人になっていた。叔父の親友でもふたり切りになるやいなや遠慮なく警察に通報するだなんて、やるじゃないか。さすが母の弟をくんづけで呼ぶだけのことはある。さすがあの姉の娘である。おとなしく観戦しててくれ。
決闘場に到着した。
白い階段を上ると、カードショップの対戦室まるまる一部屋分のスペースがあった。中央には、広いガラステーブルが鎮座している。椅子はない。立ってプレイするスタイルのようだ。
吉幾三の歌声がやんだ。
続いて流れてくるのは、エクスデスのテーマ「覇王エクスデス」だ。
ちくしょう。道房の頭に血が登る。なんでオレが吉幾三で相手はファイナルファンタジーの音楽なんだ。差をつけるにもほどがあるだろ。なにこの嬉しそうな歓声。オレ、ヒール確定じゃないか。負け役確定じゃないか。ふざけんな。こっちだって、流して欲しいファイナルファンタジーの曲があったのに。
対戦相手のダークネス・鈴木が、ゆっくりした足取りで向かってくる。いいね。熱い声援浴びてるね。気持ちいいよね。好きな曲で入場だもんね。
てめーなんぞにゃ絶対負けねえ。
道房は歯をガリガリ鳴らしながら熱意を燃やした。
『さあ! いよいよ! いよいよ始まりますねー、解説のファイナル・大沢さん! ファイナルファンタジー・トレーディングカードゲーム第4回ワールドプレミアム大会決勝、第1回戦! ついについに始まります! ダークネス・鈴木対禿野道房の戦いの火蓋が、今まさに切って落とされようとしております! 2回戦行い、勝ち数の多い方が勝ち進みます! もーのーすーごい声援です! この6万人の観衆が見守る中、いよいよオープニングアクトです!』
『実況の古鼬さん。オープニングアクトって前座って意味っすよ。一応これ前座じゃなくて本戦ですから』
『さあ! この決勝に駒を進めた12人の選手の中で、いったい誰が最後まで勝ち抜くのでしょうか! 最強は誰だ! いやあ、ファイナル・大沢さん。それにしても「覇王エクスデス」にはシビレましたねえ!』
『流した。ていうか、吉幾三にビビりましたよ。まさかこの会場で、あの日本初のラップ曲のリリックが真っ先に聴けるだなんて思わなかったっす』
『というわけで、ファイナル・大沢さん! いよいよ対戦が始まるわけですが、今回からは特殊な演出が施されているんですよね?』
『また流された。えーと、そうっすね。抽選のときもそうでしたが、フィールドにカードを出すと、3D立体映像がテーブル上にバーンと浮かび上がります。あのテーブル、超ハイテクなんです。さらに、アタック時には攻撃するし、ブロック時には防御ポーズを取ります。3D映像が動くんです』
『それはすごい! 楽しみですねー!』
『ええ。是非、ティファとか出して欲しいっすねー、あと、ティファとかティファとか』
『ティファ! ティファいいですねー、ファイナル・大沢さん!』
『お。まさか古鼬さんもティファ派っすか?』
『モチのロンです! エアリスには悪いですが、ティファ一択です! ゆっさゆさです!』
『まじっすか!? エアリスには悪いけど、俺もっす! たぷんたぷんです!』
『ぷよんぷよん!』
『もゆんもゆん!』
『予期せぬ邂逅! おおーっと! そうこうしているうちに、対戦が開始されるようです!』
『ティファでパーンチ!』
さーいしょーはぐーっ! じゃーんけーんぽんっ!
6万人で最初はグーの大合唱とかおかしいだろ。志村けんの影響力すごすぎだろ。もうこれだけで歴史に名を刻んでるだろ。そう思いながら、道房はじゃんけんに勝利した。
「んじゃ、先攻いかしてもらいます」
「ケケケッ。ここで運、使い果たしたんじゃないといいねェ」
対戦相手のダークネス・鈴木が、不気味な笑みを浮かべた。
「はは。どーですかね」
大人として、年上としての余裕を見せつつ、デュエルテーブルを眺める。
ガラスでできた広いテーブルだ。フォワードゾーン、バックアップゾーン、デッキゾーン、ブレイクゾーン、除外ゾーン、そしてダメージゾーン。それぞれ、LEDの光できらびやかに区切られていた。手前には、デジタルタイマー。15分と表示されている。これで持ち時間を確認するのだろう。
デッキゾーンには、すでにデッキがセットされている。
道房のデッキは、星々が描かれた蟹座スリーブに包まれていた。デッキコンセプトは、ダントツに大好きなファイナルファンタジーのシリーズをテーマにしたものだ。けれど、この大会のためにキーカードを3枚、違うカードに変更している。それが吉と出るか凶と出るか。
綺麗なガラステーブルの向こうには、うさんくさいダークネス・鈴木が立っている。
黒いローブのフードを目深にかぶった上に、サングラスをかけていた。裾から除く手首には、金色のゴツい腕時計。なんというか、ちぐはぐな印象だ。ぶっちゃけ気持ち悪い。TCGやってるのがこんなイケてないプレイヤーばかりだと思われたらどうしよう。ていうか、この大会に出てるデュエリストのほとんどが放送禁止だぞ。大丈夫か。本当に大丈夫なのか。もっとまともなやつらを出した方が良かったんじゃないか。美少女とかイケメン出しとけばよかったんじゃないのか。道房は余計な心配をした。
『ディール!』
天井から、天の声が響き渡る。
デッキゾーンに配置したデッキから、シャッ! とカードが5枚配られた。自動だ。このデュエルテーブルにデッキをセットしたら、自動で配られるのだ。すごいハイテク。しかし、シャッフルは手動だった。ペチペチと10枚並べてを5回繰り返すディールシャッフルをしてから、シャッシャとヒンズーシャッフルした。ワンカットもし合った。そのうえ、先攻後攻を決めるのに最初はグー。わけわかんない。
道房は、ふっと笑みをこぼす。
この大舞台に上がってもこれだけ突っ込めるなんて、余裕あるな。いけるぞこの勝負!
『オープン!』
天の声とともに、道房とダークネス・鈴木は手早く5枚のカードをハンドに納めた。
思わず「きたー!」と道房は叫びたくなったと同時に家に帰りたくなった。
リノア(2-046U)、ウォード、ウォード、アーヴァイン、スコール(PR-016)。
ここにきてこれかい。なにこのクソハンド。先攻だよ? バックアップ2枚あるけど、出せるのはアーヴァインだけ。しかも4CP払わないといけない。アビリティも不発する。
最初のドローに賭けてもいいが、可能性は薄い。というか自信がない。
「……マ、マリガンします」
「ケケッ。どーぞどーぞォ。オレ様は、もちろんこのままでOKだぜェ」
くそっ。悔しいが仕方がない。1回だけ許される手札交換だ。道房はデッキを手に取り、5枚の手札を一番下に重ねた。デッキを置くと、すぐに5枚のカードが自動で配られる。
南無三!
シルドラ、ゼル、スコール(PR-016)、アーヴァイン、コスモス。
かなりマシになった。しかし、道房の胸をざわめかせる嫌な予感が確信に変わった。
このデッキ、カードが切れてない。ランダムに混ざってない。いや、切りすぎて元に戻ったような感じか。
『デュエル、スタート! ターン1! ミチフサ・ハゲーノ! ドロー!』
ドウン! と、地響きがした。
それが歓声の声だとわかるのに、数秒間要した。
そうだ。照明の中にいて客席はほとんど見えないが、6万人の観客に注目されているのだ。
道房はあらためて、とんでもないところにきているんだなと思う。
40代になってからTCGを始め、メキメキと頭角を現し、親友や姪の力添えもあり、ここまでこれた。奇跡だといってもいい。その奇跡が、奇跡のままで終わるのか。奇跡を、実力と言い換えることができるのか。これは挑戦だ。自分への挑戦だ。これに勝てば、きっと嫁も認めてくれるに違いない。昼飯を我慢してブースターパックをこそこそ買うこともなくなるだろう。
テーブルの上には、1枚のカードが配られている。ファーストドローだ。
「うっしゃ! 行きます! ん! 引いてきたかりそめの獅子を切って、バックアップにコスモスを出します! ……って、うおわっ!?」
道房の前に、白き衣を身につけた豪奢で美しい女神が浮かんでいた。
コスモスだ。
コスモスが、立体映像となってテーブルの上に現れた。
「おい、おっさん。ターンエンドかいィ?」
「はっ! あ、ああ、ええと……。タ、ターンエンドです」
自分のタイマーを見ると、1分も消費していた。抽選会ですでにこの3D映像は見知っていたが、いざ自分の出したカードが立体化するのを見ると、思いがけず感動してしまう。
『ターン1! ダークネス・スズーキ! ドロー!』
「2枚引いたぜェ。ケケッ。いい手札だァ。遠慮なくいかせてもらうぜェ」
ダークネス・鈴木の判断は速かった。フェアリーを切って魔界幻士(2-090C)。フースーヤを切って砲撃士(4-078C)。そしてターンエンド。
相手のテーブルに、立体化した魔界幻士と砲撃士が並ぶ。可愛らしいデフォルメキャラだ。
「……つか、1ターン目からバックアップ2枚?」
速さを優先する余り焦ったのか、なにか策があるのか。ダークネス・鈴木は、金の腕時計を見せつけながら、銀のリングのついた指でサングラスを直している。表情が読めるようで読めない。道房には判断がつかない。
『ターン2! ミチフサ・ハゲーノ! ドロー!』
自動で、2枚のカードが配られる。
落ち着こう。今はまだ熟考しているところじゃない。できるだけ時間を取っておかなくては。道房は素早い判断でバックアップにジル・ナバートを出した。
「お、おお……!」
綺麗だ。綺麗なおねーさんだ。ふくよかな胸。優しい瞳。ゲーム内のCGより、メガネのCGより、こっちの方がぜんぜん良い。エロい。萌える。コスモスと並んでると、もう目移りしちゃう。前屈みになっちゃう。許されるなら下から覗き込みたい。6万人の観衆の前でなに考えてんだ。
「……おい、おっさん。鼻の下伸ばしすぎだぜェ。ターンエンドかいィ?」
「え? あ、ああっと、はい! タ、ターンエンドです!」
自分のタイマーを見ると、2分も消費していた。やばい。女性キャラを出すのやばい。自重した方がいいかも知れない。
『ターン2! ダークネス・スズーキ! ドロー!』
ダークネス・鈴木のサングラスが、キラリと光る。
「ケケケケッ。女に目を取られてる場合じゃねぇぜェ、おっさんよォ。イッツショータイムだァ!」
バァーン!
突如相手のテーブルに現れたのは、青くむっちりとしたスライムのような暗黒魔術師、エクスデス(3-070R)! そして、そのアビリティによって呼ばれたのは、たまゆらの雷光! ライトニングのイミテーションだ!
「なっ!? 2ターン目にそれ!? うっそぉ!」
「ケケケッ。その表情、オレ様がもっとも見たかった顔だぜぇ! エクスデスはフィールドアビリティで、イミテーション1体につき+1000のパワーを得る。つまり9000だァ。そしてたまゆらの雷光はヘイストを持っている! アタックッ!」
「まじかーっ!」
たまゆらの雷光が跳び、武器を振り下ろした。
バギャーン!
轟音とともに道房の足下が発光し、全身が赤く染まる。これがダメージの表現か。続いてデッキの一番上からカード発射され、ダメージゾーンに置かれた。ゼルだ。EXバーストは発動しない。
「ケケッ。初ドローに初プレイに初ダメージかァ。いいねェ、アンタ。うらやましいやァ」
「初EXバーストもいただきたかったけどな。……くそっ」
いきなりピンチだ。9000のフォワードなんて、止められるのか?
ダークネス・鈴木がターンエンドして、道房のターンに移る。
フォワードを出したいところだが、今は我慢と判断し、アーヴァインをバックアップに出す。アビリティでたまゆらの雷光に6000ダメージを与え、ブレイクした。
しかしダークネス・鈴木の攻めは緩まない。ターンが移ると、2枚目のたまゆらの雷光が登場。エクスデス(3-070R)とたまゆらの雷光のダブルアタック。2ダメージが加わわり、道房はあっという間に3ダメージを負うことになった。
「こいつで、形勢逆転だ!」
道房は次のターン、ラグナ(2-031S)を出した。ライフルを肩に置いた、黙ってれさえいればいい男、ラグナ。スペシャルレア最安値を記録した伝説の愚カードであるが、コスト5でパワー9000は満足できる強さ。アビリティだって、使い方さえ誤らなければ強い。道房はそう確信している。
「うっし! ターンエンドだ!」
「ケケケケッ。頼りねェフォワードだねェ。甘いぜェ。甘すぎるぜェ。オレ様のターン。こいつを喰らいなァ! アシストォ!」
登場したのは、青魔道士(3-085C)。ダークネス・鈴木は、自分の第1メインターンに青魔道士(3-085C)のアシストを使ったのだ。コスト5以上のフォワードを、手札に戻すアビリティが発動しようとする。
道房は自分の手札を睨んだ。
相手のフォワードゾーンには、エクスデス(3-070R)とたまゆらの雷光が並ぶ。ここでラグナ(2-031S)を失えば、更に2ダメージを受けてしまう。
「……背に腹は代えられん!」
悪手とわかってても、やらねばならぬ時がある。
道房は手札からシルドラを切ってコストに使い、もう1枚のシルドラを出した。対象は、ラグナ(2-031S)。このターン、ラグナ(2-031S)は対象に選ばれない。青魔道士(3-085C)は、なにもすることなく姿を消した。
「ケケッ! 随分必死じゃねェかよォ。おっさん。いいのかいィ? だいじなだいじなシルドラ1枚、無駄に棄てちまってよォ」
「うっさい。他に切るもんないんだ。それよりどうなんだ? ターンエンドか?」
「ラグナひとりでどこまで持たせるつもりか知らねェけど、つきあってやるかァ。ターンエンドだぜェ」
「オレのターンだな。行くぜ! マリアだ!」
ドシュウ!
色白ロングヘアーの綺麗なおねーさんが登場!
かと思いきや、バックアップゾーンに登場したのは、ひとの形をしたモザイクだった。モザイクの立体映像だった。
「……なにこれ。なんなの? マリア? マリアだよね? バグってんの? ……ま、まさか、著作権がらみ? 契約が間に合わなかったの?」
「……運営さんよォ。しっかりして欲しいなァ」
なんてこった。マリアのエロ美しい肉体を舐めるように眺めまくろうと思ってたのに、想定が崩れた。
いや違う。
これでラグナ(2-031S)のパワーが10000になるから、エクスデス(3-070R)もそう簡単には攻撃できないだろう。道房はターンエンドする。
ダークネス・鈴木のターン。
「行くぜェ。見せかけの豪傑をプレイ! そして、エクスデスでアタックだぜェ!」
「くっ! パワー10000か!」
見せかけの豪傑も、イミテーションだ。フィールドにいるイミテーション1体につき+1000されるエクスデス(3-070R)は、パワー10000になっている。ラグナ(2-031S)もマリアのアビリティでパワー10000になっているが、ブロックすれば相打ちになってしまう。
「ブロックは、……しない!」
エクスデス(3-070R)が暗黒魔法を放つ。
ズドォン!
4ダメージ目が、道房に入った。
あと4ダメージで、勝負が終わる。負けが確定する。
いや、そう簡単に負けてなるものか!
道房にターンが回ってきた。新たに配られた2枚のカードを見て、道房の目の色が変わる。
この状況を打破するには、これしかない!
「ラグナでアタック!」
「……ほおゥ。パワー10000でアタックかァ。確かに、エクスデスがダルになっている今、オレ様のフォワードでは耐えきれねェ。スルーすれば、ラグナのアビリティが発動、かァ。……それにしても、しょっぱいアビリティだなァ! ケケケケッ! スルーだァ! ダメージを受けてやるぜェ!」
ラグナがライフルを連射し、ダークネス・鈴木にダメージが通った。
やっと1点!
しかし、それだけじゃない。
「ラグナのアビリティ発動! ダル状態のフォワードに6000ダメージ! 対象は、エクスデスだ! さらにスタックで、2コスのイフリートを撃つ!」
わかっている。
ダークネス・鈴木のバックアップに魔界幻士(2-090C)が立っていることを。立体映像になっているんだ。見逃すわけがない。
「……はァん。いいぜ。喰らってやるよ。イフリートの追加5000ダメージで計11000ダメージを受け、エクスデスはブレイクする」
なん、だと?
道房はぞっとする。なぜ魔界幻士(2-090C)を使わない。魔界幻士(2-090C)なら、イフリートの効果を消せるはずだ。想定している所作だった。邪魔なバックアップを消したあとで、ムンバを撃つはずだった。それなのに、魔界幻士(2-090C)は動かない。これでは、3コス以下の召喚獣が撃ちにくいままだ。
「おおっとォ。EXバーストが出てるじゃねーかァ。対象は、ラグナにしとくかァ。で、カード1枚もらうぜェ」
ダークネス・鈴木のダメージゾーンに出たのは、キュクレインだった。
この状況でキュクレインは恐くない。
だが、ダメかも知れない。ここで初めて、道房は悲観的になる。
この流れは、間違いなく相手に傾いている。カードの引き、ダメージゾーンのカードでさえ、ダークネス・鈴木の方に運がある。
「ウ、ウォードを出して、ターンエンドする……」
「ケッ。もーちょいまともなフォワード出して欲しいもんだねェ。だったら、こっちも出すまでもねェか。やめた!」ダークネス・鈴木は、一度手をつけたカードを引っ込めた。「賢者を出すぜェ! ブレイクゾーンのエクスデスを戻すッ! あとはうたかたの夢想を出して、ターンエンドォ!」
まずい。再びエクスデスを出すつもりか? もたもたしている場合じゃない。
道房はドローされたカード2枚を取る。しかし、フォワードはない。このデッキ腐ってる。
「でえい! ラグナでアタックだ!」
「いいぜェ。うたかたの夢想でブロックだァ」
うたかたの夢想をブレイクしたものの、ダークネス・鈴木にダメージが通らない。
遠い。果てしなく遠い。
このトーナメントは特別ルールで、相手に8点を与えなくては勝利にならない。あと7点も、与えられるのか。
道房はバックアップにドクター・シドを出してターンエンドする。おっさんなんか出しても楽しくもなんともない。浮かび上がる映像は、今まさに下半身を露出しようと周りを伺っているエロオヤジのようななポーズだ。
「そろそろ仕上げに入るぜェ。エクスデスをプレイッ! アビリティで、かりそめの魔女をプレイッ! 対象はラグナだァ!」
「な、なんだと!?」
かりそめの魔女のアビリティによって、次の道房のターンになってもラグナ(2-031S)はアクティブにならない。残っているのは、ウォードのみ。これは致命的だ。
「たまゆらの雷光でアタック!」
「うぐう。と、通す!」
「見せかけの豪傑も、アタックだァ!」
「ぐううう……。と、通す!」
2ダメージが加わった。EXバーストはない。合計6ダメージ。あと2ダメージで負ける。後がない。
「ターンエンドだァ。さあ、おっさんよォ。このまま終わっちゃあ、つまらねェぜェ。見せてくれよォ、脅威の逆転劇をよォ」
「い、いいだろう。うっしゃあ! ディスティニードローだーっ!」
道房は、カードを取った。
コスモス、ムンバ、時魔導士(1-044C)、魔界幻士(1-047C)、マリア。
ここにきてこのハンド。マジである。
ちなみにフォワードは、ダメージゾーンにずらりと並んでいる。
「……タ、ターンエンド」
「……ほ、ほォう。カ、カウンター狙いだなァ!?」
わかってるだろ。もうわかってんだろ。手がないってわかってて、慈悲でいってるんだろ。意外と優しいね。道房はそう思った。
「アタックフェイズに移るぜェ! 受け切ってみなァ! たまゆらの雷光でアタック! 見せかけの豪傑でアタック! かりそめの魔女でアタック!」
優しくなかった。
「ありません」
道房は、がっくりとうなだれた。
Chapter 3:奇跡の勝利 へつづく。
手札にフォワードこないがあるあるすぎますw
もいたんドSだと?!
>ねぎちゃん
読んでくれてありがとおおお!
手札にフォワードこないなんてデフォですよデフォ。でもゲーム開始時にはバックアップ0枚がデフォ。
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