ネタバレとか気にしないで書いてます。
「崖の上のポニョ」を嫁と観てまいりました。立川のCINEMA TWOです。7月19日土曜日の9時30からの回なので、公開初日の初回。満席に近かったと思います。子ども多め。
宮崎駿監督の作品ってなんかこう、いっつも好きになれないんですけど、この作品は良かったです。”考えるな、感じろ”的な、素晴らしい作品でした。
声優に関しては、観る前は否定的な考えでした。しかし実際観てみたら、宮崎駿監督の作品って芸能人の声がよく似合うことに気づきました。力が抜けているというか、本職の声優さんの声よりも自然に感じました。
ストーリーは、環境保全を目的としたマッドサイエンティストの作り出した人面魚が、研究所を脱走して幼女に化け、港町を洪水で襲い、少年をとりこにし、老女を健康にするという展開でした。間違ってないけどこう書くとアレなんで忘れてください。宮崎駿監督のババァ趣味は健在です。
深いことは考えちゃいけないな、と思いました。
いろいろと謎みたいな伏線みたいな人間の罪を問う的なナニカがチラチラ出てきますが、それはそれとして置いておきましょう。ぶっちゃけ、関係ありません。それらは、理由として存在してるだけ。
この作品は、動く絵本。
アニメーションとして、とても正しい作品。
色鉛筆風の背景はステキで、そのためだけじゃないだろうけど、1カットが長めになってました。
子どもに対しては、真っ正面から。
大人に対しては、童心にうったえる。
そんな作品です。ピュアなんです。左脳を働かせて観るもんじゃないです。右脳で、感性で、素直にありのままを受け入れるのです。信じれば救われます。想いの強さが世界を変えるのです。なんか書いてて宗教っぽくなってきた。
個人的には、予想以上のデキでした。良い作品を観たな、と素直に思いました。
しかしながら、試写会では子どもたちの反応が全く無かったらしく、宮崎駿監督はものっそい落ち込んだらしいです。
もしかしたら、我々大人は、子どもに対して幻想を抱きすぎなのかも知れない。
現代には、2ちゃんに犯罪予告を書いて逮捕されちゃうような病んだ子どももいる。両親がパチンコ通いでろくにかまってもらえないとか、幼児虐待とかも多い。宗介みたいに純真無垢で正しい子どもや、ざっくばらんで暖かい家族関係なんかは、すでに東京都では絶滅しているのかも。共感を覚えるより先にあこがれを抱くほど現実とかけ離れた理想的な登場人物。この断絶はもう、仕方がない。つかまあ、この作品に限ったことじゃないですね。
けれど、劇場での子どもの受けは、なかなか良かったと思います。ただ、隣に座ってたオッサンが、やけに童心に帰っており、子どもすら笑わないちょっとしたことで異様に受けてて、かなり冷めました。このオッサン、楽しみ過ぎだろう。ここであんたが受けるなよと、胸の内で突っ込むのに忙しかったです。
そういえば、劇場のグッズ売り場に、小さな人面魚がたくさん入ってる網があって、なんじゃこりゃーとか思ったんですが、実際はそれどころじゃない量の人面魚でした。
あと、スタッフロールがとても簡潔で、驚愕のあまり失禁しそうでした。声優を含めた全キャストが、あいうえお順で一気表示。子どもたちが退屈しない演出の、斬新なスタッフロールでした。これはすごい。
ちなみに、観る前はポニョの歌を唄いまくってた嫁ですが、観終ったらピタリと止まりました。あれー?
いゃあ、映画って、本当にいいものですね。
‘映画’ カテゴリーのアーカイブ
幻想を抱きすぎ
2008年7月23日 水曜日壮絶な怒りのオーラ
2008年7月15日 火曜日
ネタバレとか気にしないで書いてます。
「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」を嫁と観てまいりました。立川のCINEMA TWOです。12日の土曜日の10時なので、公開初日の初回。CINEMA TWOでいちばん広い劇場なのに、ガラガラでした。何故だ。
ウエンツ鬼太郎2作目です。監督も同じ本木克英。前作は、とにかく西田敏行がステキすぎて失神寸前でした。今回は西田敏行が出てないのでちょっと心配です。
序盤は、えらいまったりのんびりした感じでした。ご都合主義的に時空間を超越した謎解き、みたいな感じで進みます。ショコタンくらいしか見るとこありませんでした。千年前の回想シーンで京極夏彦が出てたみたいですけど、まったく気づきませんでした。
ウエンツ鬼太郎は、最初からいてもいなくてもいいような影の薄い存在で、結局最後まで地味な存在でしたが、特に序盤はものすごく存在が薄くて残念でした。いいキャラクターだと思うのになあ。髪とか衣装の色合いのせいか、画面に溶け込んじゃってて見えません。
今回のヒロインは、北乃きい。よく知りませんが、きい、ってすごいヒステリックな名前ですね。それは置いておいて、役柄です。女子高生ならではの、ころころと主義主張の変わる感受性の強い不完全な女の子を演じていましたが、なんとなく華がなかったような気がしました。
やっぱヒロインは猫娘です。前回よりキュートで、とっても良かったです。華があります。いじらしいです。萌え萌えです。アニメ版なんかメじゃないです。田中麗奈サイコーです。
ストーリーは、濡れ女がメインなのに、夜叉とぬらりひょんが関わってきてぐだぐだになってました。たぶん、濡れ女だけだと話としてはまとまるけど映画として盛り上がらないからだと思います。
お蔭で後半、夜叉と戦闘→ぬらりひょんと戦闘→巨大骸骨と戦闘→濡れ女と戦闘という、ボス戦4連戦なんてゲップが出るような展開になっちゃってました。最後は敵を倒す方法が2つあって、2つとも使うとか、無駄なとこがやたら多かった。
話題性のためだけの配役とかは、まあ仕方がないですよ。気にしません。
で、やっぱビビビだと思うんです、ビビビ。ビビビのネズミ男。
ちょっと活躍の場が少なかった。すごく残念。もっともっと出てもいいのに。むしろ常に画面に出てればいいのに。
もうこの際、「ゲゲゲの鬼太郎」じゃなくて「ビビビのネズミ男」でいいと思います。このシリーズは、大泉洋のネズミ男でもっているようなもんです。タイトルは「大泉洋のネズミ男」でもいいくらいです。それくらい、オナラの威力あります。
パン! パン! ブゥッ!
いゃあ、映画って、本当に面白いものですね。
その後、「クライマーズ・ハイ」を観ました。立川のCINEMA CITYです。友人と合流し、6人で観ました。
監督は、「テラ戦士ΨBOY」で脚本、「おニャン子・ザ・ムービー 危機イッパツ! 」を監督した原田眞人。
主演は堤真一ですが、山崎努とか遠藤憲一とか田口トモロヲとかシブイ役者が脇を固めてます。蛍雪次朗と堀部圭亮は、こっそり好きな役者です。高嶋政宏はあんまし出番なかったけど、インパクトあってすごい良かった。
実はあんまし期待してませんでした。日航機墜落事故を取材する記者の話かー、すごい地味な話なんだろーなー、映画になってんのかなー、なんて思ってた。当然、原作も読んでませんでした。寝る気マンマンでした。
そしたらアナタ、けっこー面白いじゃないですか。
緊迫感あるし、テンポは良いし、役者の演技も良い。新聞社の描写も良い。それに、ぜんぜん地味じゃない。ぐいぐい引き込まれる。上映時間2時間半で腰が痛くなりましたが、退屈することはなかったです。
腑に落ちない箇所がいくつかあったんですが、リアリティのある映画として仕上がってたと思います。
観終わったあと、原作ファンの友人が、壮絶な怒りのオーラをまとい、壁をガツンと殴って大穴を開けていました。原作と違う。原作で泣いた部分が一カ所も映像化されてなかった。夜叉のような顔で、そうつぶやいておりました。
話を聞いたら、映画で腑に落ちなかった箇所が、スッキリしました。なるほどー、そうなってたのかー、と。
映画では、いろいろと設定を変更したために、つじつまが合わなくなってたみたいです。
主人公の内面的なことは、原作の設定とエピソードがあれば納得できます。日航機墜落事故のときの話と老年期の山登りの話が噛み合ってないな、と感じてたんですが、これも設定を変更したためでした。
原作ものの映画化は、難しい。
いゃあ、映画って、本当にいいものですね。
あすかあきお
2008年6月24日 火曜日
「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」を観ました。6月21日の公開初日に、立川のCINEMA TWOで、友人11人と観ました。ずらりと座席を占拠。
19年ぶりのインディ・ジョーンズ。作品の中でも、前作の「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」から19年が経ち、第二次世界大戦後が舞台。
1作目の「レイダース 失われたアーク」で出てきた聖櫃が、再登場します。
あと、”バイオレンスバトルかーちゃん”マリオンが誰だかさっぱり思い出せなかったんですが、彼女も「レイダース 失われたアーク」で出てたらしいです。ヒロインです。そういわれても、さっぱり思い出せませんが。役者も同じカレン・アレンです。やっぱり思い出せません。
というわけで、「レイダース 失われたアーク」に直結する続編です。
どうでもいいことですが、映画が始まる前に「ハムナプトラ3」の予告をやっててすこしズッコケました。
感想は、すごいネタバレかも知れません。
(さらに…)
スタンリー・キューブリックフェア
2008年6月18日 水曜日
鼻毛を抜いたら白髪だった。
そんな清々しい曇天と湿気のわだかまりの中、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
「シャイニング」を観ました。レンタルDVDで。原作者のスティーヴン・キングが撮り直したわかりやすい方じゃなくて、スタンリー・キューブリック監督の方です。
いやもうね。すごい。とにかくすごい。なんにもないのに、とにかく常時音楽が究極的にスリリングでサスペンスなホラーチック。子どもが三輪車でホテル内を周回してるだけなのに、ゾクゾクしちゃう。
あと、顔芸。すごい。とにかくすごい。ジャック・ニコルソンの顔芸がとにかく強烈に残虐で凶悪。あと、奥さん役のひとのビックリ顔も、かなりのクオリティ。
説明不足なのは、スタンリー・キューブリック監督なので仕方がないです。逆に説明とかしてもらいたくない。人間の狂気に理屈なんか必要ない。これはこれで良いと思います。
でも、ぜんぜん恐くなかった。
面白かったです。
連続して「2001年宇宙の旅」を観ました。スタンリー・キューブリック監督です。
何度か観る機会があったというか何度か観てる気がするんですが、まともにちゃんと観てなかった気がしたので、観てみたんですけど、記憶の中のこの作品にはびっくりするくらい脳内補正がかかっており、首を傾げてばっかりでした。
公開されたのは、1968年。つまり1971年生まれのワタクシが誕生する前の作品だということを忘れちゃいけない。「ウルトラマン」よりも古い。そういう意味では、信じられないほどクオリティが高い。
けれども、昨今の3DCGバリバリ作品のせいで、この映画の印象の脳内補正がすごいことになってました。これは仕方がないと思います。
それにしても、なにがなんだかわかりません。
わからなくて正解だと思います。嫁は、冒頭の真っ暗な画面にBGMがただただ流れているというシーンで、さっそく寝てました。
芸術的としかいいようがないこの作品の圧倒的なリアリティは、この「間」の力が大きいと思います。あと、完全なまでの「放置」。あえてナレーションを取っ払ったこの作品は、現実と同じようになんの説明もなされない。ただ現象があるだけ。
とかいいつつも、いろいろと調べてたりしててかなり蘊蓄溜まった状態で観たわけですが。
面白かったです。
実は自分の中でスタンリー・キューブリックフェアが実施されてたんですが、しばらくスタンリー・キューブリック監督はいいです。精神疲労が激しい。
おなかいっぱい。
こんなのガンダムじゃあ勝てない
2008年6月12日 木曜日
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」を観ました。レンタルDVDで。たぶん生涯で2回目。
大人になったアムロが、大人になったシャアと殴り合い、大人げなく本音をぶっちゃけ合い、やがて一緒に消えていくお話。
「機動戦士ガンダムF91」と違って、とてもわかりやすい展開でした。戦局もわかりやすい。あらかじめ舞台というかお膳立てが揃っているお蔭ではありますが。
いつまで経ってもわかり合えないアムロとシャア。わかり合っているからこそ、認められないのかも知れません。この確執が面白い。「機動戦士ガンダム」の時代からの、総決算。
この作品の中で、自分が嫌な大人であることを自覚しているシャアが、いちばん子どもなのかも知れない。アムロも表面的には大人になってますが、一皮むくとあぶない。
あと、ララアの存在が、もはやふたりにとってトラウマを越えて呪いと化しているのが興味深かったです。無邪気を通り越して、かなり邪悪ですララア。
ハサウェイ・ノアが、意外と良い感じで頑張ってたので良かったです。さすがミライさんの血筋。優れたニュータイプの片鱗も見せていたし、トラウマも得た。カツ・コバヤシとは違いました。
こんなことをいうのは非常にアレなのですが、出渕裕のMSがあんまり好みじゃありません。いや、サザビーやナイチンゲールは当然のこと、ギラドーガやケンプファーなんかは好きなんですが、出渕ガンダムだけが好きになれない。NT-1が嫌いだから、UCシリーズで唯一「ポケットの中の戦争」だけ観てないくらいです。
この「逆襲のシャア」も、公開からだいぶ経ってから観ました。アムロの息子が奇跡を起こす小説版は読んでましたが。
というわけで、νガンダムがイマイチ。フィン・ファンネルはカッコイイと思うのに、地味目のカラーリングとか顔とか脚が好みじゃないです。ごめんなさい。あなたとは一緒になれないわ。
まったく関係ないんですけど、実は今までナイチンゲールって永野護デザインだと思ってました。ごめんなさい。なんで永野護だと思ってたんだろう。
で、当初ボツになった永野護デザインのナイチンゲールというかナハトガルを見ました。2007年1月のNewtype綴じ込みポスターです。
こりゃあボツになるわ。
今の永野護の絵なのでどこからどう見てもMHだし、当時はもっとMSっぽかったとは思いますけど、これはない。こんなのガンダムじゃあ勝てない。アムロがスーパーニュータイプでスーパーコーディネーターだったとしても、勝てる気がしない。
Hi-Sガンダムが見たい。
ちなみに、TMネットワークってこんなに歌ヘタだったっけ? と嫁にいったら、本気で怒られました。
面白かったです。
大人が作ったアニメ
2008年6月10日 火曜日
「機動戦士ガンダムF91」を観ました。17年ぶりに。レンタルDVDです。たぶん完全版の方。
やはり安彦良和のキャラクターは良い。すごく良い。今のアニメのキャラクターには、デブとブサイクが足りません。
やはり大河原邦男のメカは良い。すごく良い。デナン・ゾンとかカッコ良すぎる。デナン・ゾンのMG出ればいいのに。でもF91はちょっとアレだと思いました。
作画は多少荒いとこもありましたけど、あの細かいディテールのMSがモリモリ動いてるのを観ると、思わず身震いしちゃいました。
わかってはいたんですが、ストーリーはかなり詰め込みすぎでした。
20話分の物語を115分に詰め込んだような感じで、キャラクターの感情や行動について違和感がありまくりました。あれだけたくさんのキャラクターが出てるのに、ひとりひとりに割ける時間が少なすぎます。アンナマリーとか惜しすぎる。ザビーネだって、いろいろエピソードあったろうに。ロナ家については、小説版読んでないとわけわかんない。
戦争も、どこでなにやっててどうなってるんだかさっぱりわかりません。ロナ家の思想に時間かけるくらいなら、地図とか使って現状を説明して欲しかった。映像だけだと理解しにくいです。
ラフレシアは、非常にもったいなかった。F91と戦う前に、戦艦10隻沈めるとか、単独でコロニー破壊しちゃうとか、その強さを表現してもらえないと、どんだけすごいんだかわかりにくい。
F91の”質量を持った残像”は、もっとわかりにくい。”口臭攻撃”も派手さがない。公開当時映画館で観て、もちろん脳内補正バリバリで盛り上がってたのに、観終わったあと内心ガッカリしたのを思い出しました。
大人が作ったアニメ。そんな感触を抱きました。
今のアニメって、等身大だと思うんですよ。感触が。残酷描写や酷い描写があったとしても、ぬるさというか、心地よさ的なものがある。共感できる。細かいところのこだわりが、理解できる。
ところが、富野監督や、宮崎駿監督もそうなんですが、大人が作るアニメっていうのは、どことなく大人のニオイがする。
それは説教臭さであったり、達観的な雰囲気であったり、どうにもならない社会であったり、融通の利かない嫌な大人のキャラクターだったりする。突き放されたような、もどかしい部分。けれど、そこにリアリティを感じる。なれ合いじゃない、現実感を感じる。だからこそ、反抗する主人公に感情移入できる。
それって、今となっては貴重だなー、なんて思いました。昔は大人が作ったアニメばっかだった。
面白かったです。やっぱり富野監督は良い。
イカとクジラ
2008年6月9日 月曜日
「イカとクジラ」を観ました。嫁が借りたレンタルDVDで。2005年の映画です。
ヨーロッパ映画だと思ったら、アメリカ映画でした。
過去の栄光にすがりつくしかない、売れない文学作家のダメオヤジ。浮気しまくりで、売れっ子作家のダメオカン。父を真似た文学家かぶれで、盗作癖があり、女に強がって嫌われるダメ長男。家では酒を呑み、学校で自慰するダメ次男。
もーイヤんなるほどダメな家族。彼らの日常が、もーイヤんなるほどリアルかつ克明に淡々と続きます。
離婚を決意したり、別居したり、浮気相手が誰かわかったり、自慰行為が学校にバレたり、若い女にもてあそばれたり、盗作が発覚して大問題になったり、カノジョにふられたり、思い切って仲直りしようとしたら笑われたり、倒れて救急車で運ばれたり、イカとクジラを観に行ったりします。
で、オチはナシ。
いくらダメでもイヤでも家族の絆は永久不滅だし人生は死ぬまで続く、といわんばかりに、ブツッと終わる。
あまりにも生々しく、心の傷に入り込んでくるので、正視できませんでした。これがホームコメディー? リアルすぎて、心当たりありすぎて、これっぽっちも笑えません。
面白くなかったです。気分的に。でも映画としては、今ふうの純文学っぽくて良いと思いました。
少女のうつろな表情
2008年6月6日 金曜日
「パンズ・ラビリンス」を観ました。嫁が借りたレンタルDVDで。
スペイン映画でした。なんかいろんな賞を取ってるみたいなんですが、まったく知らなかった。
1944年の内戦が続くスペイン。主人公の少女は、母の再婚相手である大尉のもとへやってくる。そこはゲリラの潜む山奥で、戦場。野営地のそばには、神秘的な迷宮の遺跡があった。少女は妖精にに誘われて、迷宮の中へ向かう。
少女は半身半獣のパンと出会い、いくつかの試練をクリアして、ついに魔法の王国へ王女として迎え入れられます。
しかし、この映画は、いろんな解釈ができると思うんですよ。
こう思いました。
冒頭のシーン、少女のうつろな表情が確証です。
残虐でプライドの高い大尉も、夢見がちでかよわい少女も、実は同じ。
ふたりとも、実は悪役だった。
このコントラストがすごい。対比がものすごく巧い。
少女の方を、ファンタジックに、温かい目で、優しく描写し、大尉の方をとことん悪逆非道に描いてますけど、結局は同じ。
思いやりがない。現実を直視していない。自分だけの幸せを考えている。自分の都合の良い世界を夢見ている。自分だけの世界に生きている。
最後、生まれたばかりの赤ん坊をこのふたりは取り合います。これも、少女の方は慈愛に満ちたように描き、大尉の方は自分の欲望を満たすように描いてますが、自分のために利用しようとしたことは同じ。
だから、このふたりは死ぬ。
現実に引き戻される。無慈悲で救いようのない報いを受ける。
助かるのは、現実から目を背けず一生懸命生きている、ゲリラのオバサン。敵を欺くことにも躊躇するようなとても優しい心を持ち、思いやりのある彼女は、死ぬことはなかった。
つかまあ、非常に酷い話です。確かにダークファンタジーです。迷宮のように捻くれてます。監督の悪意を感じます。
けれど、こういうの大好き。
絶対に選んでなかった映画だっただけに、嫁に感謝です。嫁は「ローズ・イン・タイドランド」のときと同様、とても残念な顔してましたが。
R-12だけあって、残酷描写は痛々しかったです。口をナイフで裂かれたりとか。あと、不気味レベルが高くて強烈な魔物がいました。あの目玉取り外し式のデザインは秀逸です。
すごい面白かったです。観てよかった。